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NDSMには一般企業が入居できるエリアも。感性の高い若者の集まる場ということで、リクルーティングやマーケティングの観点からMTVを傘下に持つバイアコムのオフィスも入っていた。
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アムステルダムでは、家具を修復する際に大理石風の模様を施すことがある。このブースでは、ペイント職人がレクチャーを開き、市民がその技術を学んでいた。

イベントやスペース貸しで得た収益はすべてエリアに還元していく

 ここにはオランダの歴史があり、アートがあり、カルチャーがあり、ビジネスがある。これがNDSMの個性であり、新たな文化発信の場となった背景なのだろう。だがもう1つ、NDSMをユニークな場にしているものがある。「自治の精神」だ。

 オンラインプラットフォームNDSM.nlの設立は3年前。プロジェクトデベロッパーとアムステルダム市、企業、アントレプレナー、アーティストの出資からなる財団だ。かつて再開発プロジェクトに関係する団体の意見が分かれ、バラバラになりかけた。信頼関係を再構築するため、関係者全員が再開発に参加できるネットワークを作ったことが端緒となる。

 NDSM-werf財団の現在の業務はエリアのメンテナンス、イベント開催、コミュニティのファシリテートが3本柱だ。外部からの依頼で商業イベントにスペースを貸して収益を得ることもあるが、NDSM-werf財団はあくまで非営利団体。イベントの収益は、実現難度の高いクリエイティブなイベントを企画・運営することでエリアに還元する。NDSM-werf共同創立者のアン・マリー・ホーグランド氏は言う。

NDSMの未来を関係者全員のディスカッションで描いていく

「商業的なイベントとクリエイティブなアートイベントの両方が行われることで、エリアのプロフィールも高まりますし、アーティストがこのエリアに留まりやすくなる。商業とアーティストがお互いに支え合い、どちらも恩恵を受ける形で機能しています。中立的な立場である私たちだからこそ、サポートできるのです」

 そして目下の中核業務と言えるのは、エリア全ての関係者をつなぐオフライン・オンラインのコミュニケーションツールを作ることだ。この2年間、ヴァン・リエット氏とホーグランド氏は、「Self made future」プロジェクトを進めている。ともにNDSMの未来を描くためのオープンなディスカッションだ。

 オフラインのミーティングは週1回。『エリアの将来について話したければ、毎週木曜日の4時に赤いコンテナに集まる』という習慣は、コミュニティ内に完全に定着した。ディスカッションの結果は「Work on the Wharf, Laboratory NDSM-wharf:future vision 2014-2025」として出版されている。

「天気がよければ外で、悪ければ屋内で。参加したい人なら誰でも歓迎です。ここに入居しているアーティストや大企業はもちろんですが、アムステルダム市、地域の住民、ただの通りがかり、いろんな人がやってくる。だから10人しか来ない週もあれば40人を集める週もあります」(ホーグランド氏)

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様々なテキスタイルを扱う服飾系アーティストたち。