「マツタロウの森」から始まる循環型教育モデル

この取り組みは、地域との密な連携により成り立っている。
矢掛町役場や教育委員会、地元の学校との協議を重ね、同社の経営企画部員が中心となって運営を担う。教員免許を持つ研究員や、ボーイスカウト経験者の社員も加わり、専門性と実践性を融合させたプログラムが設計されている。
岡山に工場があることや県木がアカマツであること、さらには岡山がかつて日本有数の松やにの産地だったという背景を踏まえてプロジェクトの立ち上げを主導した常務取締役執行役員の延廣徹氏は、「松を通じた未来につながる取り組みでお役に立ちたい、地域の皆さんと交流を深めたいという思いがあった」と語る。
活動は2025年度で3年目を迎え、これまでに子どもたちと共に累計約150本のアカマツを植樹してきた。
参加した児童からは「森のことを考えるようになった」「自分の手で植えられて嬉しい」といった声が寄せられ、学びが関心や行動へと確実につながっている。
取締役執行役員で経営企画本部長の冨宅伸幸氏は、「今後の課題としては、関係者が代わっても思いをつないで継続できる取り組みとすることや、松の植林地の確保、さらに他の地域への展開や地域への貢献をどこまで広げていけるかを模索している」と語る。
企業のSDGs推進を一過性で終わらせないためのモデルづくりが、すでに動き出している。
荒川化学工業のこの挑戦は、資源を使う立場から「資源の未来を育てる当事者」へのシフトと言える。素材の力を地域と結び、教育と協働によって再生の循環をつくり出すこの取り組みは、矢掛町の風景だけでなく、社会のレジリエンスをも静かに強化していくに違いない。
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