
数字が「本質的な価値」を示す
サプライチェーンにおける温室効果ガス(GHG)の排出量を捉える国際的な基準として、「スコープ(Scope)」がある。
スコープでは、モノがつくられてから廃棄されるまでのGHG排出量を、大きく3段階に分けて捉えている。1つ目は自社が直接排出するGHG(スコープ1)、2つ目は自社が間接排出するGHG(スコープ2)、3つ目は原材料の仕入れや販売後に排出されるGHG(スコープ3)。これに加えて、GHGの排出量ではなく「削減量」を評価する「スコープ4」が基準として広く知られている。
ストレージ王がこの基準に従い、スコープ1から4までを含む包括的な算定を実施したところ、谷在家のコンテナの再利用によるCO₂の純削減量は6万4334.7キログラムにのぼった。これは乗用車約17台の年間CO₂排出量に相当する。
「数字として環境貢献度が明確になったことで、単なる経費削減ではない『本質的な価値創造』を実現できたんだと、大きな達成感がありました」と坂上氏は語る。
スコープ4に分類される、新たなコンテナの海上輸送の回避は特に効果が大きく、1056キログラムの削減に成功していた。
加えて、再利用プロジェクトでは、環境だけでなく地域経済への貢献も意識。再利用前の塗装作業では地元の塗装業者と連携し、環境と経済の両面を配慮する「三方よし」のモデルを構築した。再利用するコンテナの移設作業を担当した企業からは「これは一度使われていたコンテナなんですか? 新品同様にしか見えないですね!」とも声をかけられたという。
今後は再利用可能なコンテナの安定確保の道を探りつつ、2026~2028年度に全国規模での展開と、10万キログラムのCO₂排出量削減を目指す。そのためには、物流コストの最適化や第三者機関による環境効果の検証体制構築も重要だ。
業界全体をリードする存在として、トランクルームの2つの業界団体、レンタル収納スペース推進協議会(RSA)とSelf Storage Association Asia(SSAA)などでも発信を行い、2029年度には他業者との連携による業界標準化とアライアンスの確立、2030年度のコンテナのライフサイクル管理プラットフォームの構築も見据える。
さらに、アジア太平洋地域の事業者とのネットワーク形成により、国際的な再利用プラットフォームの可能性も探る考えだ。
坂上氏は、定量公表という「小さな一歩」が業界を動かす契機になると強調する。数字で裏打ちされた循環の実践は、ストレージ王の事業に「持続可能な資源活用モデル」という新たな価値を与えた。
こうした大きな意味を持つ「小さな一歩」が他業者、他業種へと伝わり、循環型社会の輪が広がっていくことに期待したい。
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