「周りの現実を変えたいのなら、まず自分を変えることから始めるべきである」
これは3000年以上も前に、古代エジプトの優れた哲学者アーニ師が自分の息子に宛てた「手紙」の中で残した言葉である。私はこれを何度も読み、今のエジプト経済の混沌とした状況を考えにはいられなかった。今こそ私たちは、アーニ師の教えから学ぶべきではないだろうか。
エジプト革命はもうすぐ15周年を迎える。今やエジプト人は、体制を変えるには、大統領や旧体制を排除するだけで十分でないことを理解した。新生エジプトが誕生するには、新しい「エジプト人」の誕生が必要不可欠だと悟ったのではないだろうか。大統領や旧体制を排除する「最初の革命」は終わった。そして「次の革命」は、国民が自分自身と向き合っていくことにほかならない。私も一人のエジプト人として賢人アーニ師の言葉をもう一度反芻し、「次の革命」へ向かいたい。
ナイルの流れが静かに未来を映すころ、日本とエジプトの絆は新たな章を開こうとしている。日本は、エジプトの地に「学び」という種をまき、希望の芽を育てている。日本式教育の導入や教師の研修、若き研修生たちの往来は、単なる技術移転ではなく、心の在り方を交わし合う文化の旅だ。それは教育を通じて社会を変革し、人と人との間に信頼の橋を築こうとする物語でもある。
エジプトの子供たちは、教室の中で「学び」と「まごころ」が出会う瞬間を目にしている。礼儀、協働、思いやり──日本が長く育んできた知恵が、ナイルの風を受けて新たな形に芽吹いていく。
今、エジプトは過去の栄光を懐かしむのではなく、それを礎として未来を紡ごうとしている。日本の知恵を鏡として映し出しながら、エジプト人自身の持つしなやかな柔軟さと、互いを思いやる利他の精神を呼び覚ましているのだ。その試みは、古代から続く文明の息吹と、東の島国から届く静かな光が交わる瞬間である。
その光はやがて、カイロの教室にも、ナイル沿いの小さな村にも届くだろう。 そして、新しいエジプトは、知の翼を広げながら再び空へと羽ばたくのだ。

米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由