周子瑜は「人民元に謝罪したのだ」

 台湾の若者たちを取材する中で筆者がハッとしたのは、ある若者が「周子瑜は人民元に謝罪したのだ」と回答したことだった。

 実にうまい表現をするものである。

 たしかに――。

 台湾の経済界が拝んでいるのも人民元だし、それゆえに中国共産党一党支配体制下における中国式の経済構造が台湾にも入り込んできて、中国社会並みの貧富の格差を招いている。

 今般の台湾における総統選と立法院の選挙は、「人民元を拝むのか否か」に関する台湾人の選択であり、「チャイナマネーを選ぶのか」、それとも「台湾人としての人間の尊厳を選ぶのか」という選択であったと思う。

 若者が「自尊心」を選んだというのが、今回の選挙結果であったのかもしれない。

 香港の若者といい、台湾の若者といい、中国に吸い込まれるかもしれないという危機感を抱く若者たちがアジアを変えていく。精神性により、地域政治を変えていくことができるとしたら、なんと素晴らしいことか。

 このたびの台湾総統選の勝利は、この精神性がもたらしたものだ。チャイナマネーとの兼ね合いにおいて、蔡英文政権になってからの舵取りを見守りたい。

[執筆者]

遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。