「お金を持っている人や、持つべき人というものは存在する」と、カーターは回顧録の最後に書いている。だが、それがどういう人なのかは、はっきりしない。カーターは真実を追求するタイプのジャーナリストではないのだ。

クリス・ボグナー米記者がロサンゼルス・タイムズ紙の書評で指摘するように、この回顧録の主な読者は「今も雑誌中毒の人たち」だろう。この種の本はそれが描く世界がもはや存在しないからこそ、魅力と羨望の的となるのだ。

確かに、活字メディアがダメになったのはカーターのせいではない。だが、現役ジャーナリストたちには縁のない、華やかな時代を謳歌した元業界の大物たちの回顧録(どんどん増えている)は、どこか薄っぺらさを感じさせる。

業界のトップとしてさんざんいい思いをした挙げ句、過去を振り返り、現在はあり得ないことだと嘆くフリをする。そこには、なぜこのようなことになったのか、誰が勝ち、誰が負けたのかについて、誠実な説明がまるでない。

とはいえ、そこにはあまり踏み込まないほうが賢いのかもしれない。このご時世、誰に仕事やお金を恵んでもらわなければならなくなるかは、分からないのだから。

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