最初は「おなごに何ができる、と言われたこともある」と犬束は笑う。だが、決してめげなかった。

「女性でもできるということを示したかったし、私たちは海で育てられてきたから恩返しの気持ちもある。漁村を取り巻く環境を少しでも改善して、捕れるものに付加価値を付けて漁業者にお金が落ちる仕組みをつくりたい」

毎日試作品を作り、漁業者たちに味見してもらったり、長崎県の水産課に持参して試食してもらったりを繰り返すうちに応援してくれる人が増え、風向きが変わっていった。

やがてさばいたイスズミを水に漬け、何回も水を替えて丁寧に血抜きの下処理をすると臭みが取れることが分かり、すり身にして玉ねぎなどの野菜と混ぜ合わせてカツを作ったところ、ネコまたぎだったとは思えない美味な一品が完成した。

玉ねぎの分量にもこだわったカツは、水産庁や漁業共同組合などが後援するFish-1グランプリで19年の国産魚ファストフィッシュ部門グランプリを獲得。新しい水産資源の開発や加工技術が評価された。

イスズミのカツやアイゴのフライは、今では「肴や えん」での人気メニューだ。対馬の学校給食にも採用され、子供たちが海の環境を学ぶ格好の教材になっている。

いつかイスズミやアイゴが水産資源として捕獲されるように
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