フランスの哲学者ミシェル・フーコーは、論考『汚辱に塗れた人々の生』において、罪人に対して費やされたほんの微かな記述を手がかりに、歴史から抹消されかけた人々の生を描き出した。

今やわたしたちは、SNSでの書き込みやコメント、あるいはメールや携帯、LINEの履歴など、さまざまな「汚辱」を撒き散らす可能性の下で生きるようになってしまっている。

わたしたちはたいていが「普通の奴ら」の一員であり、歴史的な存在たる人はそう多くはない。

だが、わたしたちの生とともに生み出されるパン屑のような言葉や記号の断片こそが、本書で様々な例を尽くして述べられているように、わたしたちの歴史を構成し、それに動きを与えてしまえるような、そんな時代を迎えているのではないだろうか。

大橋完太郎(Kantaro Ohashi)

1973年生まれ。神戸大学大学院人文学研究科教授。専門は近現代フランス思想、表象文化論、芸術哲学。著書に『ディドロの唯物論』(2011年、法政大学出版局)。訳書にマーク・フィッシャー『ポスト資本主義の欲望』(2022年、左右社)、リー・マッキンタイア『ポストトゥルース』(2020年、監訳、人文書院)など。

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 『普通の奴らは皆殺し インターネット文化戦争 オルタナ右翼、トランプ主義者、リベラル思想の研究』(Type Slowly)

 アンジェラ・ネイグル[著]

 大橋完太郎[訳]/清義明 [監]

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