プーチンは繰り返し核の使用をちらつかせるが、これを実行すれば、ロシアは20世紀のナチスに代わり21世紀最大の嫌われ者になるだろう。
ロシア人は第三帝国時代のドイツ人と同じく侵略戦争を支持している。ソ連が輸出した経済モデルで多くの国が貧困に陥った後で隣国に核爆弾を落とせば、ロシアには「世界で最も歴史に逆行している国」、ロシア人には「世界で最も野蛮な国民」のレッテルが定着する。
こうした負の遺産は数十年たっても消えない。ドイツ人に聞けば分かるはずだ。
重要なのは、側近たちがプーチンとどこまでいくのかという点だ。最後まで支えるなら彼らはいずれ国家ともども中国に翻弄され、困窮するだろう。領土を奪われた遺恨を、中国が晴らそうとするのは間違いない。
戦争で誰が得をするのか、権力中枢の人間は考えたほうがいい。答えは無論、プーチン1人だ。可能なうちに損切りをして手を引くか、沈む船と運命を共にするか。彼らが迷っている間にもロシアは崩壊していく。
帝政ロシアの貴族と同じ末路をたどりたくないなら、側近は自分の資産を守るためにもプーチンに退陣を促し、ウクライナに領土を返還して国家的損害を食い止めるべきだ。
だがあいにくロシア人は国が大惨事に見舞われない限り、戦略を変える気にはならないらしい。
S・C・M・ペインS.C.M. PAINE
米海軍大学校で歴史学と国家戦略の教鞭を執る。『アジアの多重戦争1911-1949』(みすず書房)をはじめ著書多数。
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