これらの攻撃は、従来の活動範囲を超えて広がっている。シリア南部や政府支配地域への浸透が目立ち、ISISの情報収集力と機動性の向上を示唆する。プロパガンダ面でも活発で、オンライン媒体を通じて新政権を「背教者」と非難し、軍から脱走を兵士らに呼びかけている。

特に、HTS指導者のアフマド・アル・シャラを「イスラエル工作員」と中傷するキャンペーンは、シリア国内の陰謀論を煽り、政権の正当性を揺るがせている。イスラエルによるシリア領内への空爆が頻発する中、こうしたプロパガンダはISISの支持者を増やす効果を狙っている。

シリア国内の脆弱性とISISの戦略

シリアの現状は、ISISの再生にとって好条件と言えよう。宗派間の緊張が高まっており、スンニ派とアラウィ派、ドルーズ派の衝突が頻発する。ラタキア港周辺やダマスカス南部での暴動がISISの攻撃を誘発し、さらなる混乱を招いている。

新政権は少数民族の保護を公約しているが、資源不足と統治力の弱さから対応が追いつかない。結果として、ISISは「政府の無能」を宣伝し、若者や不満分子をリクルートしている。

2025年5月には、シリア南部で政府軍車両を狙った爆破事件が発生し、7人の死者を出した。これに続き、米国支援の自由シリア軍(FSA)に対する攻撃も確認された。これらの事件は、ISISが単なる散発的なテロではなく、組織的なキャンペーンを展開し、国際的な注目を集め、資金や戦闘員を集めようとしていることを想像させる。

米軍撤退の影響と国際対応の課題

ISISの脅威を抑えてきた最大の要因は、米国主導の地元武装勢力への支援だ。2014年以来、約2,000人の米軍がシリアに駐留し、クルド人主体のシリア民主軍(SDF)と連携してISIS掃討作戦を進めてきた。情報共有、偵察、訓練支援が功を奏し、ISISの勢力を大幅に削いだ。

しかし、トランプ政権は2025年4月にシリアからの段階的撤退を発表し、年末までに1,400人に削減する計画だ。2026年9月までにイラク・シリアからの完全撤退を目指す方針で、基地の統廃合も進んでいる。

将来の見通しと提言
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