ジャウラニは宗教や民族の壁を越えた新生シリアの構築のため穏健路線に舵を切っているが、それに反発する者たちがフッラース・アル・ディーンなどの武装勢力に流れるだけでなく、シリア東部などではイスラム国によるテロ事件が増加しているとの情報もあり、シリアが再びテロの温床になることへの懸念もある。
しかし、トランプ政権がこういった対テロの問題に深く首を突っ込むことはないだろう。トランプ大統領が外交・安全保障政策の一環として、各地域におけるテロの脅威を根絶するため、各国の軍・警察の支援などに本腰を入れるとは考えにくい。
仮にあるとすれば、諸外国に存在する米国権益(米国大使館や米国企業、米国人)に対する大規模なテロ攻撃が発生し、テロ対策の強化で当事国に圧力を掛ける場合のみだろう。不法移民対策は対テロでもある
トランプ大統領が重視する対テロは、外交・安全保障というより治安、国土安全保障というものになろう。
今回の大統領令でも、外国のテロリストや安全保障上の脅威からアメリカを守ることが含まれたが、トランプ大統領は早速、不法移民対策の一環として南部国境の非常事態宣言を発出し、メキシコと接する南西部の国境地帯に軍を派遣するとした。
実際、イスラム国などと関係するメンバーらがメキシコ国境を超えて米国に流入することへの懸念もあり、トランプ政権にとって不法移民対策を強化することは、イスラム国などのテロの脅威の流入を抑えることも意味する。
今日のデジタル化社会では、イスラム国やアルカイダなどのテロ組織はブランドやイデオロギーと機能し、それに感化された個人によるテロはいつどこで起こっても不思議ではなく、それを事前に食い止めることには限界がある。
よって、トランプ政権の4年間でもテロ組織のブランドやイデオロギーに感化された個人によるテロは発生することが予想されるが、不法移民対策の強化を前面に出すトランプ大統領としては、メキシコ国境から流入したイスラム国関係者が国内でテロを起こすというシナリオは避けなければならない。
同じテロ事件だったとしても、その後にトランプ政権が受ける政治的ダメージは大きく異なる。トランプ政権における対テロは、外交・安全保障というより治安、国土安全保障に大きく比重が置かれたものになろう。
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