セラミックと麦飯石での結果の違いについて、研究者らは「表面形態(表面積)の違いと、麦飯石は暗いモザイク色が光照射下での活性炭素種の生成を阻害するためではないか」と考察しています。

チームはTiO₂-PDMSで培養したAUNを用いて、抗がん作用の詳細も調べました。その結果、AUNを投与すると腫瘍内の炎症性サイトカインTNF-αが増加し、T細胞、NK細胞、およびマクロファージが活性化され、腫瘍組織の破壊も見られることが分かりました。腫瘍内では大規模なアポトーシスが発現しており、強い炎症反応が誘発されていることも観察されました。

また、マウスやビーグル犬で様々な安全性試験を行い、AUN投与による重篤な副作用は無いことが確認されました。

AUNがヒトの臨床現場で応用されるようになるには、今後たくさんのプロセスを踏まなければなりません。けれど、がん治療に新たな発想を与える細菌を単離し、思いがけない材料で効率的に増やしてメカニズムを解明した本研究は、現時点ではAIのみでは成し遂げられないものでしょう。

10月は、ノーベル賞の科学3賞(物理学、化学、生理学医学)の受賞決定で、科学ニュースが増える時期です。最近、私たちの周辺はAIに圧倒されがちですが、科学を解明するヒトの力を振り返ってみるのもよいかもしれませんね。

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