<H3ロケットは、日本の大型ロケット開発の歴史においてどのような位置付けなのか。同日に行われた記者会見で若田光一宇宙飛行士が語ったこととは。2つの記者会見に参加した筆者が紹介する>

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年2月17日、種子島宇宙センターにてH3ロケット試験機1号機の打ち上げを試みました。けれど、発射カウントダウン中に第1段機体システムが異常を検知して、発射には至りませんでした。

ロケット打ち上げが「成功しなかった」ことは間違いありません。では、「失敗」なのでしょうか。

今回は、経過説明の記者会見でのやりとりがYouTubeのJAXA公式チャンネルを通じて誰でも見られたために、「打ち上げ中止」なのか「打ち上げ失敗」なのかをJAXA担当者に問う記者たちの態度にも注目が集まりました。

一方、同日は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の若田光一宇宙飛行士の記者会見もありました。全体で20分という限られた時間の中、質問は4名によって行われ、筆者もその1人として若田さんと対話しました。

JAXAはNASA(米航空宇宙局)と並び称せられる存在で、活動は一般からも高い関心を寄せられます。H3ロケットについておさらいし、2つの記者会見についても概観しましょう。

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日本の人工衛星打ち上げ用ロケットの歴史は、1970年10月に開発がスタートし、75年に技術試験衛星「きく」を搭載して打ち上げに成功した「N-Iロケット」に始まります。JAXAの前進である宇宙開発事業団 (NASDA) と三菱重工業が、米国のデルタロケットを基に製造した全長32.57メートルの三段式ロケットで、82年まで運用されました。

以来、N-II(76年から開発、81~87年に運用)、H-I(81年から開発、86~92年に運用)、H-II(86年から開発、94~99年に運用)、H-IIA(96年から開発、2001年から運用、現役)、H-IIAの姉妹機でISSに物資を運ぶH-IIB(09~20年に運用)と続きます。直近では23年1月26日に、情報収集衛星「レーダ7号機」を搭載したH-IIA 46号機が打ち上げに成功しました。

H3ロケットは、H-IIA/Bの後継機です。14年度から開発がスタートし、総開発費は約1900億円とされています。H-IIの改良開発だったH-IIA/Bとは異なり、打ち上げコスト削減や他国からの受注を視野に入れて、設計コンセプトを抜本的に見直しました。

機体は、搭載する衛星によって全長57~63メートルとなる二段式ロケットで、必要に応じて第1段メインエンジン(LE-9)の数、固体ロケットブースター(SRB-3)の数、フェアリングのサイズを変えて効率的に打ち上げることができます。さらに、H-IIA/Bまでは特注品としての製造でしたが、自動車や航空機のライン生産に近い形を取ることで、製造期間の短縮やコスト削減を実現しました。打ち上げ費用も、H-IIAの約100億円から半減の50億円にできる見込みといいます。

開発のコンセプトは、これまでの日本の大型ロケットはすべて「使い捨て型」であることも影響していそうです。打ち上げたロケットは回収・再使用されないので、諸外国に日本産ロケットを売り込むには、高い信頼性とともにコスト安を極める必要があります。

海外で広まる再使用型