調査研究広報滞在費の本質は「コズカイ」?

ところで、最高裁は5月25日、最高裁裁判官の国民審査で「在外投票」が認められていないことについて、戦後11例目となる法令違憲判決を出した。

「技術的な困難を回避するために、現在の取扱いとは異なる投票用紙の調製や投票の方式等を採用する余地がないとは断じ難い」として、在外国民を審査権行使から排除している現行国民審査法は、公務員の選定罷免権(憲法15条1項)及び最高裁裁判官審査制度(79条2項3項)に反するとともに、国会が制度改正を行うことが「必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠った」として、立法不作為の違法性に基づく国賠請求を認める判断を下したのだ。

ひるがえって旧・文通費が一定額を事前に給付するという渡し切り制度を取ったのは、その都度の精算が「大変な手間」になるとされたからだが、これも一種の「技術的困難性」を理由とするものだったと言える。

しかし、そのような技術的な困難性は現代では、クレジットカードや電子マネーを使用したり、クラウドでの経費精算システムを導入したりすれば克服できる。そうした経費精算は民間では当たり前だ。今回の抜本改正先送りが「正当な理由なく長期にわたってこれを怠った」ものとなるかどうかを、最高裁ならぬ国民がじっと見ていることを肝に銘じるべきであろう。

5月8日には元参議院議員(立憲民主党岐阜県連常任顧問)が、失効済みJR無料パスを悪用し、現職国会議員の名前を騙って新幹線特急券・グリーン券を詐取した嫌疑で逮捕され、27日に起訴されたばかり。「国会議員の特権」に対する国民の目はかつてなく厳しい。

JRパス詐取問題に対して国会(議運)が申し合わせた再発防止策は、当面の間JR側の求めがあれば「顔写真付き身分証明書」を提示するというもの。GHQのジャスティン・ウィリアムズは「国会の尊厳と権威」を高めるために郵便無料特権の勧告案を起草した。まさか75年後に「国会の尊厳と権威」が、顔写真付き身分証提示で担保しなければならない所まで堕ちるとは想像していなかったに違いない。

旧・文通費の改革を尻切れトンボで終わらせてはならない。もし経費精算という本来的な趣旨の実現を諦めるというのであれば、「調査研究広報滞在費」という意味不明の名称ではなく、いっそのこと「広報費」「図書費」「会議費」という三大費目の頭文字を採って、「コズカイ」と改称したほうがいい......のかもしれない。

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