「立法不作為の怠惰」という国民世論のそしり

確かに全国民の代表である国会議員の政治活動を支える財政的支援、ファウンディングは民主政の存続と発展にとって重要だ。しかしそのために政党助成制度や政治資金規正法が規定する寄付制度がある(政治資金規正法はザル法だが)。

したがって、国民に広がる政治不信に対応するためにも、文通費に関する実務上の弊害が技術的に克服できる以上、本来的な「実費の弁償」という趣旨に速やかに立ち返るべきだろう。これ以上問題を先送りすると、立法不作為の怠惰という国民世論からの誹りは免れない。

国会議員が職務遂行上必要となる経費の使用をあくまでも議員の「自由裁量」に委ねるべきだという考えもある。議員個人の「良心」に期待することで「議院の威信」を高めるという考えを無碍に否定するべきだとは思わない。

しかしそれは同時に、自由裁量に委ねるが故に、公金支出の適切性を外部的な会計監査に服せしめる余地がなくなるということでもある。透明性の確保がデモクラシーを支える本質的な要素とされる今日の政治にはそぐわない。

文通費の適切な運用に対する国民の信頼が揺らいでいる今だからこそ、制度を抜本的に改正し、経費性の明確化と公開化を図ることが「議院の威信」を高めることにつながるのではないか。戦後日本黎明期の議会の先達は、GHQが勧告・指示した「特権付与」を否定し「実費弁償」の方策を選択した。その趣旨に立ち返って、「一律の事前支給」という妥協策を改めるべきだろう。

具体的には、経費処理の公開化を前提に、「渡し切り」制度を廃止し、国会議員の職務遂行に必要な費用のうち、国民に「情報を伝達」し、国民が得られた「情報を基に判断」することに資するような行為に限って、その費用を国庫で負担するべきではなかろうか。

文書費、通信費、交通費、滞在費というような損益計算書における「費用」上の勘定科目を参考にする整理も大切だが、最も重要なことは、公金支出に対する監査と経費性チェックの基準を定立した上で、その制度をどうやって適切に運用していくかである。

衆参両院における独立した監査部門の設置や、会計関連資格の保持者を議員事務所が雇用する枠組み(会計担当秘書制度)の新設といった制度設計も議論しなければならない。経費の国庫負担額の上限を、例えば現行文通費制度予算の半額(約40億円)とし、残る半分を新設する会計監査強化制度の財源に充てるのも一策だ。

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