しかしそうであるならば、法務省は改めて国籍選択をさせる必要すらなかったはずだ。台湾籍の存在を認めないのならば、1985年の時点で蓮舫氏は既に日本国籍のみしか保持していなかったことになるのだから。法学者の奥田安弘は当時、蓮舫氏の「二重国籍」問題についての説明義務は蓮舫氏ではなく法務省にあると述べていた。

法務省が蓮舫氏に改めて国籍選択宣言をさせたことで、攻撃者たちは、蓮舫氏は2017年までは日本国籍を持っていなかったという曲解を行い、さらにバッシングを強めた。「二重国籍」問題を悪化させた原因の一つには、この法務省の態度および中国と台湾をめぐる複雑な外交問題があった。

 

当時の蓮舫氏の発言を振り返ると、確かに時系列や事実認識の面で不正確な部分が多かったように思える。しかしここまでみてきたように、その理由は問題の複雑さや、手続きを行ったのが30年以上前だったこと、手続きを行ったのが本人ではなかったことを考えれば、仕方なかったといえる。

蓮舫氏がダブルルーツを誇りにしていることは民族マイノリティとして当然で、ダイバーシティの観点からもそうした政治家は世界でも珍しくない。

もちろん蓮舫氏が東京都知事として相応しいかは選挙民の選択となる。しかし蓮舫氏をめぐる差別的な陰謀論は、この都知事選を機に終止符を打つべきときだろう。

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