30歳前後の頃の僕は成功はしていたけれど、それは幸せとは一致しなかった。一瞬の大人買いや残高のゼロが増えるさまは胸がすく思いはあったけれど興奮はすぐに消えた。武道館の打ち上げ風景を「何人が10年後に周りにいるだろう」と俯瞰で眺めていたら、もはやほとんどいない。
昔の仕事仲間がニューヨークの屋根裏のような僕のアパートに遊びに来た時に「こんなに落ちぶれているとは」とぽろっと申し訳なさそうに言った。その価値基準は武道館ライブを3日やる人と数人の小さなライブハウスでやる人とを比べる発想だ。
僕にとっての幸せは、心のままに生きている自分が愛される場所を見つけること。形が変わっても愛される実感を得ること。他人にどう思われるかではなく、ありのまま心と感謝の気持ちで今を生きること。
記憶から消し去ることのできないミスや、人生を困難にした失敗には、やらなければよかったと思う後悔とやっておけばよかったのにと思う後悔がある。同じ後悔でも後者は長く尾を引くもの。
3つの後悔は、手にした幸せの中で溶解されていった。今年、還暦からまた1つ年を重ねようとしている。同じ後悔ならやってする、それが僕の2021だ。
<本誌2021年1月19日号掲載>