この街に住む人はよく言う。「ニューヨークの人口は変わらない。夢を諦めて去る者と夢を持って来る者が常に同じ数だけいるから」

何かを諦めけじめをつけたあの日は、始めてもいない夢がまぶし過ぎた。でも......万が一、この先の人生のどこかでニューヨークへ戻る時があるなら、そのときは「永住」しよう。そんな突拍子もないことを考え、クルッと未来へ向き直る。

その13年後、ニューヨークとは口をきくこともなかった僕が再びジャズを学びに舞い戻り、今年で13回目の新年を迎えた。不思議なもので「万が一」を引き起こすと人生の信号は立て続けに「青」だ。

演奏が終わりまだお客さんたちが飲んでいるジャズバーを後にして少し夜風に当たると、タイムズスクエアのカウントダウンで盛り上がったグループとすれ違う。頬を紅潮させた彼らはいつからここにいるのだろうなんて、考えるのは無粋な話だ。たとえ来たばかりでも100年以上住んでいても、ここじゃきっと「誰もがニューヨーカー」なのだ。

2020年。新しい年のど真ん中を歩き続ける。あの頃、ぼんやり雲をつかむようだった未来は今ならハッキリ見える。あの日よりも人生の賞味期限が短くなった分、自分の中の熱はひたすら熱い。長い年月を結ぶ「橋」を抜けて、僕はこの街の「ビート」を奥歯でかみしめる。

<2020年1月28日号掲載>

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