そもそもテロリズムとは政治的信条に基づく暴力だが、基本的に殺人、集団での襲撃、誘拐、放火・爆破といった、人間の生命・安全にかかわる破壊活動を組織的、継続的に行うものを指す(逆に、破壊活動に政治的目標や主張がない通り魔やサイコパスなどはテロリストと呼びにくい)。

極右でもヘイトスピーチを繰り返すだけなら過激派と認知されてもテロリストとは呼ばれない。アメリカ大使館の前で星条旗を燃やすイスラーム主義者も、過激派ではあるだろうが、それだけならテロリストではない。

社会にとって著しく危険と認知されるからこそ、公的機関はテロリストに対して日常的な監視、逮捕、資産凍結、組織の解散といった厳しい対応を行える。

テロの呼称にはそれだけの重みがある。

ラスト・ジェネレーションなどの直接行動の多くは、そこまでの深刻さがない。端的にいえば、誰も殺されていない。

道路封鎖をする活動家は、ほぼ無抵抗のまま警官などに強制的に運ばれることがほとんどだ。この点だけなら、インド独立運動におけるマハトマ・ガンジーや公民権運動におけるキング牧師らの非暴力路線に近い(後に広く賞賛される彼らも当時「テロリスト」と呼ばれた)。

少なくとも、環境過激派のほとんどは対立者への暴力を誇示してきたアルカイダやKKK(アメリカの白人至上主義団体のルーツの一つ)と異なる。

解散命令は有効か

だからこそ、エコテロリズムや気候テロといった呼称がメディアで流布しても、環境過激派を正式にテロリストと扱うことは各国政府にとって難しい。

その一例としてフランスを取り上げよう。

フランス政府は6月21日、環境保護団体「地球の反乱(SLT)」に解散命令を出した。その前日、SLTメンバー18人が逮捕され、ジェラール・ダルマニ内務大臣は「集団的な暴力は容認されない」と主張した。

そもそもラスト・ジェネレーションは確固たる組織ではなく、ネット上で結びついた緩やかなネットワークである。

そのため「解散命令」そのものがシンボリックなものだが、それでもマクロン政権が環境団体を違法化したのは初めてのことで注目を集めた。

フランスでは3月、西部サン・ソリーヌで地下水を大規模に汲み上げて作られた貯水池に反対する約5,000人のデモ隊が3,000人の警官と衝突した。フランス政府はこの衝突で30人の警官が負傷したと発表したが、デモ隊の側について詳細は明らかでない。

SLTはこのデモの主催団体の一つで、国外からも参加者を募っていた。

SLTはこれ以外にも、イタリアと結ぶ新たな高速鉄道の建設に反対する違法デモ計画や、フランスを代表する建設企業の一つラファージュのセメント工場における器物損壊などの容疑がもたれている。

ところが、こうした理由からフランス政府が出した解散命令は、8月に裁判所によって停止された。行政裁判所は政府の解散命令が結社の自由に抵触するため慎重である必要を指摘し、SLTが暴力を煽動している証拠を内務省が十分示していないと判断したのだ。

過小評価するべきでもない
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