コロナ禍という未曾有のショックを受けたとき、国民向けの支援さえ「貸す」中心だった日本政府が、外国相手に簡単に自腹を切らないのは不思議でない。

さらに、これも良し悪しはさておき、日本政府は欧米各国と異なり「国際協力」のカテゴリーに民間投資も含めている。

したがって、昨年のTICAD8で示された300億ドルに関しても、貸付と民間投資がかなりの割合を占めるものと考えられている(政府は詳細な内訳を発表していない)。今回の5億ドルにしてもほぼ同様とみた方がよいだろう。

アフリカの先にある中ロ

これに付け加えて、「国際協力は人道的観点から行われる」と暗黙のうちに想定する人も多いが、これも神話に近いものとさえいえる。どちらも「そうであるはず」という思い込みに近いからだ。

いくら人道的に問題が多くとも、外交関係の悪い国に援助することに熱心な国はない。また、それとは逆に、いくら人道的に問題が多くても、外交関係さえ良ければ、その国の政府の責任が不問に付されることも珍しくない。

むしろ、国家予算を投入する以上、実際にはほぼ常に「自国の影響力を増すため」といった外交目標が含まれる。それは中ロなどだけでなく、程度の差はあれ、西側も基本的には同じだ。

今回のアフリカ支援の場合、究極的には中国やロシアへの牽制という意味が大きい。

アフリカでは2000年代から資源開発を目当てに各国が進出レースを展開している。

その一方で、国連加盟国の約1/4を占めるアフリカは、国際的な舞台で発言力を増そうとする国にとって、大きな「票田」と位置づけられる。

こうした背景のもと、とりわけ西側が警戒を募らせているのが、豊富な資金力を背景に進出を加速させる中国と、イスラーム過激派掃討などの軍事協力をテコにするロシアだ。

だからこそ、岸田首相は今回の歴訪中、折に触れて「自由で開かれたインド・太平洋」、「法に基づく国際秩序」を連呼した。これはいわばアフリカの先に中国やロシアの影を見据えたものといえる。

その意味で今回、現職首相が訪問したことの意味は大きい。

これまで在任中にアフリカを訪問した日本の首相は、森喜朗、故・安倍晋三の両氏だけだ。

これに対して、中国の場合、習近平国家首席や外交を統括する王毅氏がほぼ毎年アフリカ各国を訪問している。

一方、バイデン大統領は2020年大統領選挙の時からアフリカとの関係強化を謳い、昨年はアフリカ訪問を約束したものの、いまだに実現していない。

この状況下、岸田首相の訪問はアフリカ各国だけでなく、目前に迫ったG7広島サミットでアメリカをはじめ他の主要国に「日本の本気度」をアピールする効果があったといえる。

冷戦時代の「援助競争」とは違う
【関連記事】