SNS上のプチ・ハニートラップ

チーム・ホルヘの活動には、「顧客」に有利な世論を形成するため、一般市民に直接アプローチすることが含まれる。

潜入取材に対してホルへ幹部は、独自に開発したボットシステムにより、3万以上のアバターをSNSに投入して発信できると認めた。

要するに、自動化されたボットをターゲットの国にばら撒き、「顧客」の利益になるような、あるいは「顧客」の政敵にダメージを与えるような偽情報をSNSなどで繰り返し発信させるのだ。

2016年アメリカ大統領選挙では膨大なフェイスニュースが拡散したが、これまでの調査では、数多くの若者が「アルバイト」として偽情報をひたすら入力する、いわば人海戦術だったとみられている(日本の闇バイトとほぼ同じ)。

チーム・ホルヘはこれには関与していないと主張しているが、その真偽はさておき、少なくとも現在の手法は2016年より格段に高度化しているといえる。

潜入取材した記者は、アバターにどうやって架空のプロフィールや顔写真を与えるかのデモンストレーションもみることになった。

その際、ホルヘの幹部は「ソフィア・ワイルド(Sophia Wilde)」という名の若い白人女性のアイコンをみせ、「彼女はイギリス人だ。メールアドレスも、誕生日も、全てある」と説明した。後日、潜入記者はその写真をロシアのSNSで発見したという。

つまり、本人の知らないところで、顔写真が偽情報を拡散させるボットの顔として利用されているのだ。

SNSなどで集めた写真、特に若い女性の写真を(もちろん無断で)諜報活動で用いるのは、現代のスパイ企業ではポピュラーな手段といえる。

例えば、中東カタールで開催されたFIFAワールド杯の招致で大規模な買収があった疑惑では、米中央情報局(CIA)出身者が設立した「リスクマネジメント企業」の関与が指摘されている。同社は開催地決定に影響力をもつFIFA幹部の動向を知るため、若い女性の写真を用いたフェイクアカウントをFacebookに作り、コンタクトをとっていたことが判明している。

手法は異なるが、これもSNS上のプチ・ハニートラップという意味では同じだ。

政治家やマスコミもターゲット

チーム・ホルへに話を戻すと、その活動はSNSハニートラップにとどまらない。潜入取材に対してホルへ幹部は「選挙期間に通信障害を起こせる」と述べている。

実際、西アフリカのナイジェリアで2015年に行われた大統領選挙で、チーム・ホルへは当時のジョナサン大統領の陣営に雇われていたが、野党陣営の選挙対策責任者は携帯電話がしばしば通話もメール送信も不能になったと証言している。

メディア論調の操作も
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