また、金融機関同士の送金を暗号化して伝送するシステム(SWIFT)からロシアの銀行をシャットアウトする措置も取られているが、そもそもロシアの銀行の間では欧米主導のこのシステムの導入率が低い。

さらに、仮に欧米や日本がこれまで以上に経済取引を制限しても、ロシアの取引相手は先進国だけではない。折しもロシアの主力輸出品であるエネルギーや食料は、今や歴史的な高騰を続けている。そのため、欧米や日本から資金が調達できなくなっても、それでロシアの財源がすぐに枯渇することは考えにくいのである。

とすると、残る手段は二つしかない。「ウクライナを軍事的に支援する」か、「ウクライナをロシアに譲る」かだ。しかし、どちらもコストが高いことは疑いない。

NATOの存在意義

ロシアが侵攻を開始したことで、NATOは存在意義を問われている。

ウクライナはNATO加盟国ではないので、少なくともNATOにウクライナを防衛しなければならない法的義務はない。とはいえ、これまでの経緯から無視することもできない。

2014年のクリミア危機をきっかけに、NATOは迅速に事態に対応する高度即応統合任務部隊(VJTF)を発足させた。VJTFは現在、2万人規模とみられている。今回、NATO関係者の間では「今こそVJTFが先鋒になるとき」という意見が強い。

もっとも、VJTFが正面から動けば、それこそ第三次世界大戦に至る可能性すらある。そのため、決定の責任を負わなければならない加盟国政府とりわけアメリカは慎重にならざるを得ない。

さらにコロナ禍で経済に大きなブレーキがかかっている今、民主主義国家ほど軍事予算の拡大には慎重である。

NATOが動くかは予断を許さないものの、当事者であるウクライナもこの点には大きな期待を見せていない。

ウクライナのクレーバ外相は世界に向けて、金融支援や人道支援、ロシアに対する制裁の強化、ロシアの孤立化などとともに、ウクライナへの武器支援を要請しているが、NATOの軍事協力そのものを求めていない。ここには「そこまで期待してもムダ」という割り切りを見出せる。

「ウクライナを譲る」のか

とすると、欧米や日本には「ウクライナを譲る」しかなくなる。つまり、ロシアが求めてきた「ウクライナのNATO加盟が将来にわたってない」と確約することだ。

ソ連時代からのロシアを撃退した唯一の例
【関連記事】