いずれにしても、トランプ大統領が主流派ソーシャルメディアに依存している以上、表向きは文句を言うにしても、これらを全面的に規制することは難しい。

さらなるアンダーグラウンド化の恐れ

こうしてGABは封じ込められたようにみえるが、これが結果的に白人至上主義者をさらにアンダーグラウンド化させ、かえってヘイトクライムを誘発させる恐れは拭えない。

差別的な書き込みを繰り返すユーザーをTwitterやFacebookが排除してきたことは、いわば公の場から白人至上主義者を排除できたものの、彼らが「自分たちだけの世界」に引きこもるのを止めることまではできなかった。このパターンに照らせば、例えGABが停止しても、別の同様のサービスへの需要も、そこにビジネスチャンスを見出す起業家もなくならない。

また、封じ込められることで脱落者が出たとしても、それが残った者を思想的にさらに先鋭化させることは、ロシア帝国時代のマルクス主義者からイスラーム過激派に至るまで、多くの政治的、宗教的な活動に共通する現象だ。いわば「迫害されている」という被害者意識が、残った者の結束を固めやすくする。

そのうえ、社会全体による封じ込めは、彼らの理論にとって、むしろ好都合にもなる。白人至上主義者の一翼を担う陰謀論者QAnon支持者は、アメリカがFBIなどの情報機関や大手企業、メディアの連合体「ディープ・ステイト」によって支配されていると主張するが、GABが社会的に押さえ込まれる状況が彼らの目にこの説の正しさを裏づけるものと映っても不思議ではない。

封じ込めのジレンマ

もちろん、ヘイトスピーチやヘイトクライムは他者の尊厳や生存権を脅かすもので、認められるべきではなく、そのための規制も必要だろう。

とはいえ、押さえ込まれれば押さえ込まれるほど白人至上主義が地下に潜りながら先鋭化するなら、単に公の場から追い出すだけでは、今後ともヘイトクライムはなくならないとみてよい。それはちょうど、軍事力だけでイスラーム過激派のテロを撲滅できないことと同じである。

だとすれば、規制だけでなく、憎悪や憤りの温床となっている格差や将来への不安の払拭の重要性が改めて増してくる。この点においても白人至上主義はイスラーム過激主義と同じといえるだろう。

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