さらに重要なのはゼレンスキーの演説が、ウクライナ戦争の物語に対する世界の認識を決定付けたことだ。固い決意と共に率直に語る「普通の人」のイメージは、プーチンがつくり上げた「男らしさ」の神話が下品な凶暴性にすぎないことを暴露した。

同時にゼレンスキーは具体的な支援も要求している。軍用機、ミサイル、銃......。

「私に必要なのは(脱出用の)乗り物じゃない。弾薬だ」。国外脱出を打診した米政府当局者に言い放った言葉は、今後何世代も語り継がれるはずだ。

窮地にあるゼレンスキーの言葉は聞く者を震えさせ、恥の意識を芽生えさせ、奮い立たせる。それは実に効果的だった。

アメリカは約140億ドルの援助を決めた。EUは史上初めて、域外の国への軍事支援に踏み込んだ。歴史的に中立を守ってきたスイスとスウェーデンまでもが軍事、物資、外交の援助を約束した。

ゼレンスキーの演説は国家存立を懸けて戦う自国を大いに助けた。過去100年間で最も心を揺さぶる演説の1つだ。

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