その結果、バイデンが民主党の大統領候補として再選を目指すことになった。結局は途中で撤退に追い込まれたものの、その時点で民主党には不人気なハリス副大統領(当時)を代わりの大統領候補に据える以外の選択肢が残されていなかった。そのおかげで、トランプはもっと強力な民主党候補と戦わずに済んだ。
加えて、バイデンの衰弱を無理やり隠そうとしたことで、民主党のイメージが大きく傷ついたことも見過ごせない。有権者は、民主党は信頼できないというトランプの主張に説得力を感じ始めた。なにしろ民主党は、トランプと共和党が不誠実で遵法精神を欠くと批判していたくせに、自分たちも詐欺的な行為に手を染めていたのだ。
当時、バイデンの衰弱は疑問の余地がなく、周辺は、もし再選できた場合には車椅子を使用してはどうかと公然と話し合っていた。そして選挙戦の間は、大統領の衰弱を隠すために念入りに対策を講じた。
例えば、ホワイトハウスの中庭に大統領専用ヘリコプターで降り立った後、建物内に移動するときは、バイデンの周囲を側近たちで取り囲むようにしていた。よろめいたときにすぐに体を支えられるようにすることと、おぼつかない足取りをメディアのカメラに撮られにくくすることが狙いだ。また、スケジュールを大幅に減らし、スピーチ原稿も平易な言葉遣いに変更し、一つ一つのセンテンスも短くした。