半島の住民が韓国人と称しようが朝鮮人と名乗ろうが、彼らは同一民族だ。同じ祖先から枝分かれしたという神話を共有し、同じ言葉を話す。この同一の価値観は民族統一を崇高な理念とする。民族統一の理念は民主主義や人権など、いわゆる普遍的な価値観を凌駕する。日本が韓国との「共通の価値観」を強調しても、彼らにとって民族統一の理念に比べたら次元は低い。

「他者の立場」に立って考えよ

日本は他者の立場に立って物事を考えることも必要だろう。もし先の大戦の後、日本列島も北緯38度線で米ソによって分断されていたら、大和民族はどうするのか。片や全体主義で、もう一方が民主主義だからといって、民族統一を諦めるのか。

世界のどの民族より強烈な仲間意識で固まっている日本人は恐らく、最も苛烈な形で民族統一運動を推し進めるのではないか。

日本人は同じ民主主義の韓国が全体主義の北朝鮮になびくことが理解できないようだが、仮に半島の民族統一を邪魔すれば、それこそ植民地支配より深い恨みを買う。モンゴルの民族統一を阻止している中国をモンゴル人が絶対に許せないことが何よりの証拠だ。

日本は旧宗主国として朝鮮半島の民族統一をむしろ後押しすべきだ。そうして初めて真の友好が生まれる。

(筆者は中国・内モンゴル自治区出身で1989年に来日。2000年に日本国籍取得)

<本誌2019年9月24日号掲載「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集より>

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※9月24日号(9月18日発売)は、「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集。終わりなき争いを続ける日本と韓国――。コロンビア大学のキャロル・グラック教授(歴史学)が過去を政治の道具にする「記憶の政治」の愚を論じ、日本で生まれ育った元「朝鮮」籍の映画監督、ヤン ヨンヒは「私にとって韓国は長年『最も遠い国』だった」と題するルポを寄稿。泥沼の関係に陥った本当の原因とその「出口」を考える特集です。
朝鮮半島の2つの国家と付き合う上で、日本に欠けている視点が1つある。それは彼らが同じ民族だ、という認識である。「同じ民族が他者によって分断されるほど悲しいことはない」というのが、2度の世界大戦を経た20世紀のコンセンサスだろう。ここでいう分断民族とは東西ドイツと南北朝鮮、それに内外モンゴルだ。
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