かつてこの地で遊牧といえば自由と富の象徴だったが、今やその伝統的な観念は崩れた。資本主義の荒波を受け、経済の主軸は豊富な地下資源に移行。貧富の差は拡大し、遊牧民は貧困の代名詞となってしまった。

筆者は18年夏に中央アジアのウズベキスタンを訪れた。独裁的なカリモフ前大統領の下、旧ソ連から独立。ウズベク人初の民族国家独立を果たしたことで、国民の誇りは高い。ウズベク人だけでなく、ロシア系住民さえ、「ウズベキスタンを愛している」と誇らしげに宣言するほどだ。同じユーラシアの民であるモンゴルよりも人々の表情は明るく、経済は発展し貧困層は少ない。

そうした経緯から、ウズベキスタンの知識人たちは「ある程度の独裁者」に肯定的だ。また、現地の発展のカギとして、「都市と市場経済の要諦が分かるオアシスの民」の存在を指摘する。

シルクロードの要衝だった中央アジアと異なり、北方のモンゴルにはオアシスがなく、市場原理に精通した商人もいなかった。だからこそチンギス・ハンはアラブ商人を使いこなし、チョイバルサンは市場経済でなく社会主義集団化で遊牧経済を発展させ、国民を豊かにした。

そして今、草原の民はいかなる方向を目指すか、まだ模索が続いている。

<本誌2018年01月15日号掲載>

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