エルサレムへの米大使館移転は強い批判を呼ぶ

外交・安全保障での最重要課題と言えば日本にとっては中国、北朝鮮であるが、米国にとっては圧倒的に中東である。外交経験のないトランプ大統領であるが、選挙期間中に中東についてははかなり鋭角的な主張をしてきた。

目立ったのは、①エルサレムへの米大使館移転、②イランとの核合意の破棄または見直し、③「イスラム国」との戦い――の3点である。

トランプ大統領は就任前に言ったことを、言葉だけでなく実行していることを考えれば、この3点も今後、米国の新たな中東政策として実施されることになるだろうか。その時、日本は「内政問題だからコメントは差し控えたい」と言って批判せず、国際的には「容認」と受け取られるような対応をとり続けるのだろうか。

エルサレムへの米大使館移転については、トランプ氏は昨年3月の親イスラエル系ユダヤロビー団体「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」での演説で「我々は米国大使館をユダヤ人の永遠の首都であるエルサレムに移転する」と宣言した。

イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、ユダヤ教、キリスト教、イスラムの3つの宗教の聖地があるエルサレム旧市街を含む東エルサレムを、ヨルダン川西岸、ガザとともに武力で占領した。80年には東エルサレムを併合し、エルサレムを「ユダヤ人の永遠の首都」として宣言した。

国際社会は、東エルサレムの併合やエルサレム首都宣言を認めておらず、米国や日本を含むほとんどの国が大使館をエルサレムではなく、テルアビブに置いている。

トランプ大統領がこの「約束」を実行し、米国大使館をエルサレムに移転させれば、パレスチナだけでなく、イスラム世界からの激しい反発が上がることは避けられない。さらに欧州の国々からも強い批判が出るだろう。もし、日本が「コメントしない」となれば、日本も米国寄りとして、共に批判を受けることは避けられない。

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2番目のイランとの核合意の破棄または見直しについては、トランプ氏は選挙期間中、イラン敵視を掲げてきた。90日間の入国禁止の大統領令が対象とした7カ国にはイランも含まれている。

イランを除く6カ国は「イスラム国(IS)」やアルカイダが強い影響力を持つ国々だが、イランについては同国そのものがレバノンのシーア派組織ヒズボラやパレスチナの組織ハマスを支援しているとして「テロ支援国家」に指定している。

しかし、イランとの「核合意」は安保理常任理事国5カ国とドイツによる合意であり、トランプ政権が廃棄や見直しに動けば、国際的な批判が上がるのは避けられない。日本にとってイランは主要な原油輸入元の一つであり、経済への影響も無視できない。

トランプ大統領が本気で「イラン敵視」政策に踏み出すとすれば、国際的に孤立しないためには、日本の支持を取り付けておくことになるだろう。

さらに心配されるISとの戦い