ロシアが次に狙うのはなぜモルドバなのか

2022年4月25日(月)18時59分
ブレンダン・コール

「だが、こうしたいわゆる第2段階の目標実現(に向けてロシアが動く)という見通しは非常に懸念すべきものだ。そうなれば紛争がNATO諸国の国境にずっと近くなる。昨年12月にプーチンは(NATOの不拡大を求める)提案をしてNATO側の同意を得ることができなかったが、これを武力で実現しようと考えるようになるかも知れない」

■デービッド・リベラ(ハミルトン大学客員准教授、行政学)

「クレムリンがウクライナ侵攻を正当化する理由として挙げてきたこと、つまりロシア系住民やロシア語話者の文化的・言語的抑圧や物理的な抑圧からの保護といったものは、モルドバの沿ドニエストルにも容易に適用できるだろう」

「モルドバが侵略の危機に瀕しているかどうかは、ロシアがそうした筋書きに手を出し、モルドバ政府を沿ドニエストル住民への『ジェノサイド』で非難し始めたら分かる」

「こうした非難はロシア政府による厳しい情報統制下の世界の外にいる人間には通用しないが、いいカムフラージュになり、ロシア連邦市民の(政府への)支持を高める効果がある」

「ノボロシア」復興が中期目標?

■アレクサンダー・モンゴメリー(リード大学教授、政治学)

「ソ連の解体以降、ロシアが国外の多くの地域への影響力(の拡大)を求めてきたのは明らかだ。つまり、中期的な目標は沿ドニエストルからクリミアをつなぎ、(帝政ロシア時代のウクライナ南部の地域名である)『ノボロシア』を復活させることなのかも知れない。ノボロシアは行政単位としては1世紀も続かなかったのだが」

「これまでのロシア軍の働きぶり、そして現在の疲弊した部隊の状況から、ロシアは中期目標よりはるかに規模の小さな(クリミアへの陸上回廊を作りドンバスを支配するという)短期的目標すら達成できないかも知れない」

「ロシアは自国からほんの200〜300キロ以上離れると、制圧した地域を維持できないことが明らかになっている。(沿ドニエストルまで手を伸ばすなら)ミコライウやヘルソンのような、ウクライナ軍に部分的にであれ奪い返された都市を、ウクライナの激しい抵抗に遭いながら(再び)奪わなければならないだろう」

「マリウポリの(ウクライナ側の)防衛軍の最後の陣地の攻撃をあきらめたことで、ロシアが沿ドニエストルにまで手を伸ばすことは不可能になったと言える。それでも沿ドニエストルへの経済的支援や軍事的支援を通して問題を起こすことはできる」

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