コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」

2020年5月8日(金)14時40分
スー・キム

また彼女は、スウェーデンでは今でも、健康な子ども(6~15歳)は学校に通うことが義務づけられていると指摘。「つまり健康な教師たちも、学校で授業をし続けなければならないということだ。これまでに複数の教師が(新型コロナウイルスに感染して)命を落としている。た全体として、政府は予防のための措置を怠っているように思える」と語った。

スウェーデンは同ウイルスの感染拡大を受けて50人以上の集会を禁止し、市民には不要不急の移動や高齢者との接触を避けるよう勧告している。レストラン、バーやナイトクラブは着席スタイルのサービスのみ許可されており、営業を続けているが、ロイター通信によれば、政府は感染予防のガイドラインに従わない飲食店は営業停止にすると警告している。

高校と大学は閉鎖されてオンライン授業に切り替えられているが、16歳未満の子どもたちは今も学校に通っている。仕事に関しては、できるだけ自宅勤務にするように、とされている。

スウェーデンのミカエル・ダンベリ内相は記者会見で、「気候が良くなってくるにつれて、テラス席のあるレストランに大勢の客が集まっているようで気がかりだ」と懸念を表明。「ストックホルムでもほかの場所でも、テラス席のあるレストランが客で一杯になる状況は好ましくない。そうなれば、レストランを閉鎖することになる」とつけ加えた。

「弱い人々を守れていない」

カロリンスカ研究所のセシリア・セーデルベリ・ナウクレル教授(微生物病因)も、スウェーデンの異例の対策に懸念の声を上げてきた。彼女をはじめとする2300人近い学者たちは3月末、政府宛の公開書簡に署名。医療システムを守るために、もっと厳しい対策を導入するよう求めた。

セーデルベリ・ナウクレルは4月に入ってから、ロイター通信にこう語っている。「国が完全な混乱状態に陥ることがないように、状況をコントロールすることが必要だ。ロックダウンをしないという方法は、(日本以外)これまで誰も試していない。それなのになぜ、国民の同意なしに、スウェーデンが初めてその方法を試さなければならないのか」

またルンド大学(スウェーデン)のポール・フランクス教授(遺伝疫学)は、4月に本誌にこう語っていた。「政府の戦略は、弱い人々を守るという点であまりうまく機能していない。そのことは、多くの高齢者施設や病院内で新型コロナウイルスの感染者が確認されている事実から明らかだ」

フランクスと同大学のピーター・ニルソン教授(内科医学・感染学)は3月27日に共同で論文を発表。この中で「特に大都市圏で感染が拡大したり、医療システムへの負担が深刻化したりすれば、今後スウェーデンでもより厳しい規制が導入される可能性は高い」と指摘している。

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