新型コロナウイルス感染症で「嗅覚がなくなる」という症例が多数確認される

2020年3月25日(水)18時00分
松岡由希子

<イギリス耳鼻咽喉科医会が「新型コロナウイルス感染症の症状として無臭症が確認されている」と報告するなど、同様の状態が世界各地で確認されている......>

世界保健機関(WHO)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状として発熱、倦怠感、空咳を挙げているほか、呼吸困難やうずき・痛み、喉の痛み、下痢、吐き気、鼻水の症状も報告されている。しかし、これらの症状が顕われない無症状病原体保有者も一定数いるとみられ、このウイルスの感染拡大の抑制をより困難にしている。

「無臭症や味覚異常が世界各地で確認されている」と報告

イギリス耳鼻咽喉科医会(ENT UK)は、2020年3月21日、「新型コロナウイルス感染症の症状として無臭症が確認されている」と報告した。これまでにドイツで3分の2以上の感染者に無臭症がみられ、韓国では感染者の3割で無臭症を確認。イランや米国、フランス、イタリア北部でも同様の症例が報告されている。英国鼻科学会のクレール・ホプキンス理事長も「先週、40歳未満の4名の患者を診療したところ、無臭症の発症以外、特段の症状は認められなかった」と述べている。

アメリカ耳鼻咽喉科アカデミー(AAO-HNS)でも、22日、公式ウェブサイトで「新型コロナウイルス感染症に関連する症状であることを示す症例が世界各地で確認されている」と報告した。とりわけ無臭症は、新型コロナウイルスへの感染が確認されたものの、症状がない無症状病原体保有者によくみられるという。

新型コロナウイルス感染症の患者からも同様の症状が伝えられている。3月11日に新型コロナウイルスの感染が確認された米プロバスケットボール協会(NBA)のユタ・ジャズに所属するルディ・ゴベール選手は、自身のツイッターで「嗅覚と味覚がなくなることが症状のひとつであることは明らかだ。この4日間、嗅覚がまったくなくなった」と投稿している。


無臭症とは、においがまったくわからない「嗅覚脱失」やにおいを感じづらくなる「嗅覚減退」の症状をいい、一般に、軽度の風邪と関連している。たとえば、風邪の原因となるライノウイルスに感染すると鼻腔を刺激し、一時的に無臭症を引き起こすことがある。

「特定するうえで、無臭症が重要な症状となる可能性がある」

イギリス耳鼻咽喉科医会は「無臭症はライノウイルスなどにもよっても引き起こされるものの、新型コロナウイルスの無症状病原体保有者を特定するうえで、無臭症が重要な症状となる可能性がある」と指摘。アメリカ耳鼻咽喉科アカデミーでは、アレルギー性鼻炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎といった呼吸器疾患のない無臭症、嗅覚減退、味覚異常を、新型コロナウイルス感染症の疑いのある症状として追加するよう提案している。

イギリス耳鼻咽喉科医会では、他の症状がないにもかかわらず、無臭症が認められる場合、7日間の自己隔離を勧めている。こうした情報も参考にしつつ安易に自身で判断することなく、新型コロナウイルス感染症を疑われる場合には、各自治体が設置している電話相談窓口に相談するのがいいだろう。

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