ロシアの原油減産拒否の標的は米シェール業界

2020年3月9日(月)17時55分
ジェイソン・レモン

ロシアもサウジと同様に、アメリカの石油産業の対応力を過小評価もしくは誤解している可能性があると指摘する専門家もいる。

「2014年後半に(サウジアラビアの増産のせいで)原油価格の急落が始まった時、数百のシェールオイル生産業者が破産申請に追い込まれたが、全体的に見ればその多くは再建され、債務負担も軽減されて復活した」と、エネルギー問題のコンサルタントのデービッド・ブラックモンはフォーブス誌に書いている。

「また、多くのシェールオイル生産者は、原油価格の下落で損を出さないよう、年内から来年の売り渡し分まではすでにヘッジをかけてある。ロシアはそのことを計算に入れていない」

ともあれ、ロシアの今回の判断が石油業界に打撃を与えるのは間違いなさそうだ。

原油価格は年内に1バレルあたり20ドルになると、エクソン・モービルの元中東シニアアドバイザーでドラゴマン・ベンチャーズのCEOを務めるアリ・ヘデリーは8日、ツイッターで述べた。「地政学的な影響は大きい」

本当にそれほどの下落幅になるなら、原油価格は今の半値以下になり、生産者の経営は大きな打撃を受けることになる。新型コロナウイルスの感染拡大が株式市場に大きな混乱をもたらす中で、トランプが大統領再選に向けて経済面での功績を売りにするのはさらに難しくなるかも知れない。

(翻訳:村井裕美)

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