新型コロナウイルス感染拡大にも慌てないフランスの手腕

2020年3月9日(月)13時21分
広岡裕児(在仏ジャーナリスト)

6日、首相は「もはや第3期(蔓延期)に入るのは避けがたい」と表明した。

すでに、イタリアのロンバルディ州とベネト州、 韓国、香港、マカオ、シンガポール、中国からもどった小中高校生の14日間自宅待機は中国湖北省からの場合をのぞき解除されている。巷にもウイルスが蔓延し、隔離する意味がなくなったからである。

第3期(蔓延期)に入ると、感染者が大量になるのでとにかく重症化を防ぎ、2、3か月でヤマを越せるように全力を挙げる。当然、対処の仕方も変わる。いままでのようにすべて特別救急施設に収容するのではなく、できるかぎり一般病院や開業医がフォローする。すでに検査キットとマスクが配布されている。検査についても、能力を超えるため、軽症や無症状者が感染しているかどうかをみる検査の中止が予定されている。場合によっては、全国的な休校や公共交通機関の運休も起きるかもしれない。

外国に住む人間は口を出すな、といわれそうだが、最後にひとつ書いておきたい。

フランスの新聞でも日本では多くの人が検査拒否されているという報道が出ている。このままでは、オリンピックの開催は危うい。きちんと検査をすれば何千人という感染者がでるだろう。それを抑え込んだ、ということなら対策に信頼も置かれ、専門家はゴーサインを出すだろう。だが、前提となる検査が行き届いていなければ、いくら感染数が少なくても疑いを残すだけで、専門家の判断そのものができなくなる。

[執筆者]
広岡裕児
1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。フリージャーナリストおよびシンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。代表作に『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書)、『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文藝春秋社)、『皇族』(中央公論新社)他。

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