新型コロナウイルス:「ゴーストタウン」北京からの現地報告

2020年2月10日(月)11時15分
齋藤じゅんこ(ジャーナリスト)

食料供給に目を光らせる政府

中国政府は生鮮品などの供給不足に目を光らせているようで、品ぞろえは安定している。地方で白菜が通常の6倍以上の値段で売られていた写真が微信で出回ったが、売っていた店はすぐ当局に摘発された。

ただ、着用を義務付けているはずのマスクは品不足で見当たらない。北京市内の医療関係者は医療用すら逼迫していると語る。別の知人は接客業務で必要となる赤外線体温計とマスクをネットと市内中心部の薬局10店舗で探したが、どこも売り切れだったという。消毒薬も買えない。

日本からのマスクや防護服の寄付に関する報道は注目を集めている。筆者も「日本の支援には感謝する、ありがとう」と複数の知人に言われて驚いた。日本人の理性や温かさを伝える記事が、家に籠もってスマートフォンでニュースを見ている人たちの間で広く回覧されている。

普段は一般人も自由に入れる大学の門も今は固く閉ざされ、地方出身の学生たちの北京への移動は再開未定の新学期まで禁じられている。幼稚園や小・中・高校の新学期が始まる期日も、予定されていた2月17日を「適宜延長する」とされているが、これも詳細は未定だ。

SARSのときも、北京は発生地である広東省以外で感染者数が最大になった場所だ。SFの世界のような不気味な静けさがいつ終わりを迎えるのか、まだ誰にも分からない。

<2020年2月18日号「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集より>

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