新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?

2020年1月24日(金)12時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

地方政府の隠蔽工作:その2──地方議会である「両会」が開催される

中国では3月5日から日本の国会に近い機能を持つ全人代(全国人民代表大会)が始まるが、それと同時(一般に2日前から。会期は同じ)に開催される全国政治協商会議の二つを「全国両会」と称している。その前に各地方の全てのレベルにおける「両会」が開催され、おおむね春節前には終わるようになっている。

武漢市は湖北省にあるが、省レベルの「両会」は今年1月12日から17日まで開催されることになっていた。この湖北省両会における審議結果は、3月6日以降の各省レベル分科会において、習近平国家主席も参加して北京の人民大会堂で報告されるのである。

そのような「神聖な」湖北省両会を汚すわけにはいかない。

そこで武漢市政府は湖北省政府にも北京の中央政府にも、知られないように画策したと考えていい。

それを示す画像が中国のネットで出回っている。

それを以下に示す。

この赤い線の所にご注目頂きたい。12日に湖北省両会が開幕し、17日に「勝利閉幕(勝利的に閉幕した)」と書いてあるが、なんとその間だけは「密接に接触した者同士による新しい感染者はゼロ」とあるではないか!

つまり、この間だけは無事にすり抜けたかったのである。

その証拠に、1月19日になると、患者数が突然「3倍以上に」増加していることが報告されている。

6日間に発症した患者数を、19日に一気に発表したからだ。

この「裏事情」を知らない人々は、「19日を境に一気に感染が広がった」と報道しているが、それは実は「真っ赤なウソ!」なのである。

これが、北京、中央政府に感染の実態を報告しなかった本当の理由だ。

なぜ中央政府に情報が上がったのか?

ではなぜ中央政府・北京の知るところとなったのか。第一段階は「上海」の働きにある。

こちらの情報をご覧いただきたい。

2019年12月26日、上海市公共衛生臨床センター科研プロジェクトが通常のサンプル収集として、プロジェクトの相手である武漢市中心医院と武漢市疾病制御センターから発熱患者のサンプルを入手し、精密に検査した。その結果、2020年1月5日に上海市のセンターは、この病原菌が未だかつて歴史上見たことのない「新型コロナウイルス」であることを突き止めた。

それでも湖北省政府は両会を開催し、「たしかに病例はあったが、問題は解決していますので大丈夫ですから」という無言の偽装メッセージを北京に送った。しかしさすがに北京は疑わしいと思ったのだろう。第二段階として、1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。

こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。それを境に中国国内はパニックに突入。

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