台湾世論調査「中国が武力併合しようとしたら戦うか?」に若者の7割が「イエス」

2020年1月16日(木)10時30分
江懷哲(台湾アジア交流基金研究員)

<再選を果たした民進党の蔡英文、世論調査が浮き彫りにした「台湾人意識」で読み解く総統選と中台の未来とは>

1月11日投開票の台湾総統選は、本稿執筆時点で、現職の蔡英文(ツァイ・インウェン、民進党)が再選を果たす情勢だ。1年前は不人気に苦しんでいたが、メディア戦略の強化や対立候補である韓國瑜(ハン・クオユィ、国民党)の失態、香港で続くデモなどの要因により巻き返しに成功した。

早くも、今回の総統選の結果が今後の中台関係に及ぼす影響が論じられている。しかし、中台関係の未来を見通す上では、1回の選挙結果よりも「台湾人意識」をめぐる世代間格差の拡大に目を配ったほうがよさそうだ。

有力経済紙「天下雑誌」の世論調査によれば、自分を台湾人だと思うか、中国人だと思うか、両方だと思うかという問いに対して、20~29歳の82.4%は、自らを台湾人とだけ思っていると答えた。この割合は、40~49歳、50~59歳、60歳以上の年齢層では全て50%台後半だった。

中国との将来の関係については、20~29歳の49.4%、30~39歳の33.5%が(中国との平和を保てるのであれば)独立を望むと回答した。

それだけではない。2018年に国立政治大学(台北)の選挙研究センターが実施した世論調査によれば、中国が武力により台湾を併合しようとした場合に戦うつもりがあるかという問いに対し、20~39歳の71.6%が「イエス」と回答している。

台湾が正式に独立を宣言し、それに対して中国が武力行使で応じた場合に戦うかという問いに対しても、この年齢層の64.5%が「イエス」と答えている。この割合は全世代の平均を7.8ポイント上回る。

中国の戦略にも影響

同じ世論調査のほかの質問項目を見ると、若者たちが台湾の民主的制度を高く評価していることがよく分かる。

このような台湾世論の新しい潮流に、台湾の主要政党と中国政府はどのように対応しているのか。

蔡率いる民進党は、台湾人意識の形成を後押しし、若者の支持を獲得している。昨年7月には、2014年の大規模な学生運動「太陽花(ヒマワリ)革命」のリーダーだった林飛帆(リン・フェイファン)が民進党の副秘書長(副幹事長)に就任。総統選と同日の立法委員(国会議員)選挙にも、若い新人候補が続々と立候補した。

民進党の若い候補者の多くは、中国が台湾の民主主義を脅かしていると公然と語り、国防の強化を訴えてきた。民進党は、若い有権者の意識が変わり始めていることの恩恵を受けられそうだ。

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