数百万人の「中年フリーター」が生活保護制度を破綻させるかもしれない

2019年2月19日(火)06時55分
印南敦史(作家、書評家)

政治もようやく関心を寄せつつあり、特に2018年の自民党総裁選で安倍晋三首相と一騎打ちをした石破茂元幹事長は、この問題について危機感を募らせている。2040年には高齢者数がピークに達し、社会保障給付費が現在の1.6倍、介護費が2.4倍、医療費が1.7倍、年金が1.3倍もかかるようになり、日本は危機を迎えるのだと。

当然ながら、このような課題について考えるうえでも、中年フリーターの問題は無視できないだろう。

安倍政権は雇用が増えたとアピールするが、現実的に雇用の受け皿となっているのはサービス業や医療福祉分野が中心。そのため、著者は自身の造語を用い、"Wageless Recovery"(賃金なき景気回復)は避けられないと主張している。

生産性向上のためにも、非正規を正社員に転換していくことは不可欠だ。それは、中年フリーターを悪循環の中から救い出す策にもなるだろう。だからこそこの国は、そのためにできることを早急に検討する必要があるのではないだろうか。


『ルポ 中年フリーター:「働けない働き盛り」の貧困』
 小林美希 著
 NHK出版新書

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。新刊『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(日本実業出版社)など著作多数。

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