フェイスブック・グーグルも独自の報道メディアへ、米国で「一つの時代」が終わる

2019年12月11日(水)16時15分
ヌシン・ラシディアン(コロンビア大学ジャーナリズム大学院研究員)

そして今、報道メディアは編集権の独立や読者との絆こそが自分たちの存続に欠かせないことを理解しつつある。今までは数の「バブル」に踊らされてきたが、まっとうな収入につながらなかった。「もう規模のゲームは終わりだ」。報道メディア各社はそう考えている。

そうであれば、これからが勝負。プラットフォーム企業の圧倒的な集客力に頼って自社ブランドの価値を損ない、既存の顧客(読者)を軽視してきたことを、メディア各社は反省している。今後はプラットフォーム企業に依存せずに収益を上げる方法を見つけ、プラットフォーム企業の要求よりも読者の関心を重視して報道内容を見直す必要がある。そうすれば読者も収益も取り戻せる。そう考えるメディアが増えている。

だからプラットフォーム企業から新しい要求があっても、もう無条件で応じたりはしない。「1年前なら五分五分でも応じたが」と、ある関係者は言う。「今はこちらに利益がなければ対応しない」

新展開で「休戦」なるか

巨大プラットフォームの抱える膨大な数のユーザーを、いかにして自社のファンに変え、有料読者に変えるか。言い換えれば「アクセス数重視」から顧客(読者)の「忠誠度重視」への転換である。

プラットフォーム側も報道メディアの変化に気付き、対応を始めた。なにしろニュースは人気コンテンツだから失いたくない。そこでグーグルやフェイスブックは昨年から、メディア(とりわけ地方紙)に対し、広告収入より購読料収入を増やす方法を提案している。

グーグルニュース・イニシアティブが提供するのは「他社からの乗り換え」を促し、ユーザーを「購読者や会員」として取り込む方法だ。ライバルのフェイスブックも「ジャーナリズムプロジェクト」のページに「購読料で稼ぎたい報道メディアの支援」と題するブログ記事を投稿し、地方紙などの小規模メディア向けに「フェイスブックを利用した会員制組織」を提案している。

そして両社合わせると数千万ドルの資金を投じて新人記者の養成や技術的なトレーニング、マーケティング面の支援も行っている。

フェイスブックの立ち上げたFBニュースは「規模の時代以後」の展開を考える上で1つのヒントを与えてくれる。そこではアルゴリズムだけでなく生身の編集スタッフが記事を選び、ニュース専用のタブに記事を表示している。従来の「インスタントアーティクルズ」は既存メディアの素材を利用しつつもアルゴリズムだけで記事を選び、友人や家族からの投稿と一緒に表示し、フェイスブックのプラットフォーム上で読ませる仕組みで、メディア側に入るのは広告収入だけだった。

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