リビア内戦めぐりフランスとイタリアが対立──NATO加盟国同士が戦う局面も?

2019年4月19日(金)13時00分
六辻彰二

<様々に利害の異なる外国勢力が跋扈するリビアで、もしフランスとイタリアが戦うことになれば、それは戦後世界秩序の揺らぎの兆しの一つだ>


・リビアでは2つの政府が並び立ち、首都トリポリをめぐる攻防戦が激化している

・このうち、国連も認めるリビア統一政府は、主にイタリアに支援されているが、これは同国がリビアでの油田開発に大きな権益をもつためである

・これに対して、リビアでの油田開発に出遅れるフランスは反政府勢力「リビア国民軍」を支援することで逆転を図っているとみられ、リビア内戦はNATO加盟国同士の争いの様相を呈している

リビアでは反政府勢力が首都トリポリへの攻撃を強めており、国連が自制を呼びかけているが、いくつかの国は自国の利益のために反政府勢力を支援しているとみられる。そのなかにはフランスも含まれており、これはリビアでの油田開発に大きな権益をもち、統一政府の主たる支援者であるイタリアとの火種となっている。

「南北朝時代」のリビア

北アフリカのリビアでは2つの政府が並び立ってきたが、その混迷は大きな節目を迎えている。

4月5日、反政府勢力「リビア国民軍」は「シラージュ暫定首相率いる統一政府は過激派に乗っ取られている」と主張し、首都トリポリを目指して進撃を開始。トリポリ近郊での政府軍との衝突により、14日までに少なくとも121人の死者が出た。

リビアでは40年以上にわたって権力を握ったカダフィ体制が2011年に崩壊した後、それまで押さえ込まれていたさまざまな勢力が雨後の筍のように台頭した。その多くは派閥抗争を繰り返すなか、二大勢力に集約され、2016年からは首都トリポリと東部ベンガジに2つの政府が並び立ってきた。

このうち、トリポリにある統一政府は国連からも「正統なリビア政府」と承認されている。そのメンバーには、シラージュ首相をはじめ西部出身者が多い他、イスラーム団体「ムスリム同胞団」も有力な支持基盤となっている。

これに対して、ベンガジを拠点とするリビア国民軍は、主に東部や南部の部族などから支持されている。これを率いるハフタル将軍は、かつてカダフィ体制下で軍人として務めた経験をもつが、後にカダフィとの確執からアメリカに亡命し、リビアで内戦が始まった2011年に帰国した経歴をもつ。

北アフリカではアルジェリアやスーダンなどで「独裁者」の打倒を目指す政変が広がっている。リビアでの首都攻防戦はこれらと形態は異なるものの、2011年の政変の続きという意味で「アラブの春」第二幕の一部といえる。

フランスの暗躍

国連をはじめ多くの国は統一政府を支持しており、戦闘の激化に懸念を示しているが、なかには混乱に乗じてリビア国民軍を支援する国もある

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