なぜ、韓国政府はGSOMIAを破棄したのだろうか?

2019年8月27日(火)17時50分
金 明中

(2) 次期国会議員選挙への対策

GSOMIAを破棄した二番目の理由は、選挙戦略である可能性が高い。韓国では来年4月15日に第21代国会議員(任期は4年)選挙が行われる。韓国における国会議員の議席数は総300席で、2019年8月24日現在、与党である共に民主党が128席を、第一野党である自由韓国党が110席などを占めている。

現在の議席数は、文在寅政府が誕生する前の2016年4月13日の選挙によるものであり、共に民主党の議席数は最も多いものの、過半数は超えていない。従って、文在寅政府が目指す改革を実施するのに邪魔になっている。そこで、来年の選挙ではさらに躍進して、過半数の議席を獲得することが最上の政治目標となっている。

さらに、来年の選挙で勝たないと2022年の3月9日に行われる大統領選挙(大統領の任期は5年、再任不可)で勝利し、政権を維持することも危なくなる。そのために、文在寅政府や与党は日本に対して強い姿勢を維持することが、来年の国会議員の選挙や政権維持に有利であると判断し、日本とのGSOMIAの破棄に至ったと考えられる。

(3) 北朝鮮への配慮

また、三番目の理由として考えられるのが北朝鮮に対する配慮である。文在寅政府は、北朝鮮との関係を改善し、経済協力を推進することで、現在、韓国がおかれている経済や外交の問題を解決したいと考えている。

文在寅大統領は、8月15日の「光復節」の記念演説で、「2032年にはソウルと平壌でオリンピックを開催し、遅くとも2045年の光復100周年までには平和と統一で一つになった国(One Korea)へと世界の中でそびえ立てるよう、その基盤をしっかりと整えていくことを約束する」と述べた。日本とのGSOMIA破棄を北朝鮮への関係改善のカードとして提示した可能性が高い。

(4) 法務部長官候補のスキャンダルの緩和

そして、四番目の理由としては、法務部長官(法相)の指名後にスキャンダルが続出している曹国(チョ・グク)ソウル大学教授(以下、曹教授)への国民の関心を緩和させるための戦略である。曹教授は、2017年5月に文在寅政府が発足すると同時に、青瓦台の民情首席秘書官に抜擢され、今年7月26日まで務めていた。

民情首席秘書官とは、政府高官の監視と司法機関を統括するポストで、大統領府秘書官の中でも大統領と最も近い関係にあり、「政権の第2人者」と見る向きもある。文在寅大統領も盧武鉉元大統領時代に民情首席秘書官を担当した経験がある。

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