安倍首相が「世界最大級」と胸を張る、117兆円対策の大いなるウソ

2020年4月23日(木)12時16分
加谷珪一

一連の施策は閣議決定されたものであり、行政運営上、閣議決定の意味は重い。閣議決定を覆して10万円支給に切り換えたことは素直に評価してよいと筆者は考える。だが、真水部分が少ないなど、この施策には依然として問題が多く、経済の落ち込みに対して十分な効果を発揮しない可能性が高い。

一方で、支出の詳細項目が定められておらず、資金の使途はある程度、自由になる余地も残されている。今は、補正予算を成立させることが最優先だが、この法案を成立させた後、給付金以外の資金使途についても、給付金と同様、柔軟な決断を行っていく必要がある。

今の日本は、輸出で経済を成り立たせているのではなく、既に消費主導型経済になっている。消費は経済のエンジンであり、個人の経済状況が悪化すれば、日本経済そのものが立ち行かなくなる。

賃貸住宅に住んでいる場合、当座、10万円の支給があれば何とかなった世帯でも、家を追い出されてしまえば、その金額で生活を立て直すことは極めて難しい。ひとたび消費が壊れてしまうと、再構築するのは容易なことではない。

今後の経済対策についても、個人の生活を破綻させないことを主軸に、各種のプランを検討することが重要である。個人の生活を守ることは「福祉政策」ではなく、れっきとした「経済政策」であるとの認識が必要だ。

<本誌2020年4月28日号掲載のものを一部変更・加筆>

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2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。

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