アメリカのインフラの貧弱さに愕然

2012年11月30日(金)10時55分
池上彰

 アメリカ東部海岸を襲ったハリケーン「サンディ」。ニュージャージー州やニューヨーク州で大きな被害を出しました。

 ここからどんな教訓を汲み取るべきか。本誌日本版12月5日号に、「サンディより怖い 明日の災害」という記事が掲載されています。

 アメリカ大統領選挙中だった私は、ニューヨーク市とニュージャージー州でハリケーンを体験しました。

 大きな被害を出したアメリカの人たちには申し訳ないのですが、台風に慣れた日本人から見ると、このハリケーン、「ちょっと強くて大きい」程度の台風でした。日本だったら、けっしてこんな大きな被害にはならなかったでしょう。災害対策の社会インフラが整っていなかったための"人災"の色彩が強いものでした。

 本記事は、こう書きます。「自然災害は必ずまた起きる。その時に大惨事へ発展することを防ぐためには、今すぐインフラ整備に着手する必要がある。現在アメリカでインフラ整備に投じられている資金は、GDPの2・4%程度にとどまっている」。

 アメリカ国内を回ると、穴ぼこだらけの道路に驚きます。地下鉄の老朽化ぶりにも心配になります。エスカレーターが停止したまま、横の階段を上り下りするのにも慣れてしまいます。

 アメリカは一刻も早くインフラ整備が必要だ。本記事は、「7つのリスク」を列挙します。

 ダムの決壊、高速道路や鉄橋の崩落、地盤の陥没、大規模な停電、堤防の決壊、大火災の発生、交通網の寸断。

 新しく道路を整備したり橋を架けたりすることは有権者の歓心を買いますが、補修工事は地味で目立たず、票獲得に結びつきにくいもの。どうしても後回しになってしまいます。

 しかし、これはアメリカだけに言えるこことではありません。日本だって、インフラの劣化が進んでも、票にならないと政治も行政も動きません。これでは、「償却」の概念がなかったためインフラが劣化するばかりだった旧ソ連・東欧を笑うことはできません。

 サンディの警告を受け止めなければいけないのは、アメリカだけではないのです。

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