最新記事

国際政治

なぜ五輪選手が亡命を余儀なくされるのか ベラルーシ政治情勢まとめ

2021年8月3日(火)20時06分
ポーランドへ亡命することになったベラルーシの五輪代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手

意思に反して帰国指示を受け、羽田空港へ連れて行かれたベラルーシの五輪代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)は、隣国のポーランドが2日に亡命申請を受け入れ、4日の直行便で滞在する東京からポーランドへ向かう予定だ。写真はツィマノウスカヤ選手。7月30日、東京で撮影(2021年 ロイター/Aleksandra Szmigiel)

意思に反して帰国指示を受け、羽田空港へ連れて行かれたベラルーシの五輪代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)は、隣国のポーランドが2日に亡命申請を受け入れ、4日の直行便で滞在する東京からポーランドへ向かう予定だ。

ベラルーシはルカシェンコ大統領が1994年から同国を厳しく支配。昨年夏の選挙で勝利後、不正があったとする市民が大規模な抗議デモを行ったが、これを暴力で弾圧した。選手が政府からの支援に依存する国としては珍しく、ベラルーシではアスリートも抗議に参加、複数が投獄されたり、代表チームから外されている。

政治体制

共和制で元首は大統領。ルカシェンコ大統領が1994年に初当選し、6期25年以上にわたって現職にいる。2010年に4選を果たした後には、野党の抗議デモが発生。治安部隊が制圧して西側諸国から問題視された。

西側からの制裁

欧州連合(EU)は04年、初めてベラルーシに制裁を発動。11年には人権侵害や選挙不正を巡り制裁措置を強化した。その後、ルカシェンコ大統領が16年に政治犯を釈放したことで、多くの措置を解除した。

20年夏の大統領選

20年8月9日に投票が行われたベラルーシ大統領選挙は、現職のルカシェンコ氏が80%を得票して6選を決めた。反政権側は投票に不正があったとして、選挙結果の受け入れを拒否。首都ミンスクなどで前日に続き抗議活動が広がり、警官隊と衝突した。

長く政権の座にあるルカシェンコ氏に対し、市民からは経済政策や人権問題、新型コロナウイルスへの対応を巡って批判の声が上がっていた。その後も抗議活動は続き、多数拘束されている。

海外の選挙監視団は1995年以来、ベラルーシの選挙が自由で公正であるとは認めておらず、今回も選挙前にルカシェンコ氏の対抗馬が拘束されたり、大統領に反対の声を上げた人物への捜査が行われるなどした。

民間航空機を強制着陸

ベラルーシ当局は21年5月23日、アテネからリトアニアに向かっていた欧州格安航空会社(LCC)ライアンエアー機に対して、危険物が仕掛けられた可能性があるとしてミンスクの空港に緊急着陸するよう指示した。搭乗していたベラルーシの反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏(26)が身柄を拘束された。EU、米国、英国、カナダ、はベラルーシへの制裁を発動した。

ロシアと欧州の緩衝地帯

旧ソ連のベラルーシは、ロシアの同盟国。ロシアから西ヨーロッパへつながる石油パイプラインが通るほか、欧州とロシアの間の主要な陸路となっている。ロシアにとっては北大西洋条約機構(NATO)との緩衝地帯でもある。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に
・元男性が女子の重量挙げに出るのは不公平じゃないの? 五輪史上初のトランスジェンダー選手にくすぶる批判
・「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手、審判の指摘に絶句


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GSKの次世代がん治療薬有望か、初期データで高い

ワールド

アングル:オルバン長期政権破ったマジャル氏、親EU

ビジネス

IMF、予防的残高の下限200億SDRに据え置き 

ワールド

米豪・フィリピンが南シナ海で合同軍事演習、今年2回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中