最新記事

感染症対策規制

英・感染者再び増加、ミュージカル巨匠、劇場の窮状訴え「逮捕されても開演する」

2021年6月11日(金)17時45分
松丸さとみ

『キャッツ』や『オペラ座の怪人』などの作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーが劇場の窮状を訴える REUTERS/Eduardo Munoz

<『キャッツ』や『オペラ座の怪人』など、大ヒット・ミュージカルの作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェバーは、新型コロナの規制下でも、新作を開演する意向を明らかにした>

コロナ再燃の英国、21日の規制緩和は絶望的?

『キャッツ』や『オペラ座の怪人』など、大ヒット・ミュージカルの作曲を担当したことで知られる作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェバーはこのほど、新型コロナウイルス感染症対策の規制下でも、対人距離の制限をなくして新作を開演する意向を明らかにした。イングランドでは現在、新型コロナウイルスの感染予防策として、劇場は収容人数を半減させての公演が求められている。

ウェバーは、英テレグラフ紙との独占インタビューに答え、規制違反で逮捕されることも辞さないと発言した。6月25日から上演予定の新作『シンデレラ』について述べたもので、2018年に本格的に準備を始めたという本作品は、新型コロナがなければ昨年8月に開幕していたはずだった。

イングランドは現在、新型コロナウイルスの感染予防として英政府が定めた「ロックダウン解除までのロードマップ」の「ステップ3」にいる。5月17日以降、屋内イベントについては、観客を半減させるか最大1000人までに抑える(劇場のサイズによって、少ない方の数字を適用)の運用のみが認められている。しかし英スカイニュースによると、この状態で上演しても経済的に存続できないため、ほとんどの劇場は閉鎖しているのが現状だという。

イングランドでは、早ければ6月21日にはステップ4に移行して、すべてのロックダウン規制が解除される予定だった。しかし感染者数は再び増加傾向に転じており、6月9日には2月以来最多の感染者数となる7540人を記録した。ワクチン接種は順調に進んでいるものの、こうした状況から、ステップ4への移行は7月5日まで2週間延期されるとの見方が強まっている。

「劇場まで逮捕しに来い」

ウェバーはテレグラフに対し、自身の置かれた状況を「強烈な財政難」と描写した。ウェバーは、ロンドンの劇場街ウェスト・エンドに6軒の劇場を保有しているが、これらを閉鎖した状態で維持するだけで、月100万ポンド(約1.5億円)かかるという。そのため、ロンドンの自宅を抵当に入れて借金をしている状態であり、このままだと劇場を手放さざるを得ないと語っている。

さらに、新作『シンデレラ』には600万ポンド(約9.3億円)を投じており、収容人数を半減させての公演では、投資額を回収できないと説明する。そのため、「何があっても開演する」と言い、テレグラフの「政府が延期を要請してきたらどうするか」との問いには、「劇場まで逮捕しに来い、と言う」と答えた。

ウェバーはさらに、劇場が新型コロナのウイルスを介する事実はないと主張している。「科学的な検証結果を見た。これらはすべて、劇場が完全に安全で、ウイルスが運ばれることがないと証明するものだった」と述べた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シリアのアサド政権崩壊、反体制派がダマスカス掌握 

ワールド

仏大統領・トランプ氏・ゼレンスキー氏が会談、大聖堂

ワールド

韓国与党・首相「大統領は国政関与せず」、前国防相は

ワールド

ノートルダム大聖堂が公開再開、火災から5年半 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    電力危機の救世主は「廃水池」だった...「浮くソーラーパネル」の「一石何鳥」もの効果とは?
  • 4
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 5
    2027年に「蛍光灯禁止」...パナソニックのLED照明は…
  • 6
    シャーロット王女の「史上最強の睨み」がSNSで話題に
  • 7
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社…
  • 8
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 9
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 10
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていた…
  • 9
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 10
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中