最新記事

感染症

アフリカで進行する「静かな感染拡大」 深刻な新型コロナのデータ不足

2020年7月12日(日)12時30分

タンザニアが抱える問題

タンザニアで初の新型コロナウイルス感染症患者が確認されたのは3月16日。複数の情報提供者によれば、同国政府は翌日、WHOや各国大使館、支援国・機関など国際的パートナーと対応を調整するための対策本部を招集した。

だが、事情に詳しい2人の外交当局者によれば、この対策本部がその後外部の関係者を招くことはなく、何度となく行われた新型コロナ関連の会合に政府当局者は姿を見せなかったという。

「政府が国内における新型コロナウイルス感染症の状況について何ら情報を求めていないことは明らかだ」とある支援当局者は言う。この記事のためにロイターの取材に応じた多くの関係者と同様、この支援当局者も、有力政治家を怒らせることを懸念して、匿名を希望している。

危機対応をめぐる疑問をぶつけるため、タンザニアのユミー・ムワリム保健相と政府報道官に電話・メールで問い合わせを行ったが、反応は得られなかった。ハッサン・アバッシ報道官は以前、国内の新型コロナウイルス感染症に関する情報隠蔽(いんぺい)を否定している。

タンザニアは5月8日に感染者509人、死者21人を発表して以来、全国レベルの数値を公表していない。その数日前、マグフリ大統領は国営テレビで、海外から輸入された検査キットは欠陥品であり、ヤギやポポーの実から採取したサンプルでも陽性反応が出たと批判した。

5月8日から13日にかけて送付されたメール3通をロイターが閲覧したところ、WHOは、タンザニア国内における合同調査にWHOが参加することで政府との合意に達したものと考えていた。だがWHOの広報担当者によれば、この合同調査は開始予定日にすべて中止され、その理由は示されなかったという。

タンザニアの新型コロナ対策に対しては、支援国・機関から約4000万ドル(約43億円)が拠出されていることを、関与した2人の外交関係者が明らかにしている。だが別の当局者によれば、タンザニアが対策に本腰を入れないため、さらに「数千万ドル」もの支援を得る機会が失われてしまったという。

5月半ばには、医師や外交官らが感染封じ込めには程遠いことを指摘していたにもかかわらず、政府はロックダウン(封鎖)の緩和を決定した。米国大使館は5月13日、タンザニア国内の米国民に対し、首都ダルエスサラームの病院が「手一杯」になっていると警告したが、この時点ではタンザニア政府はこの見方を否定している。

タンザニアが感染拡大に関する情報を共有しないことで、近隣諸国も懸念を深めている。管理の甘い国境を越えてタンザニア国民が往来すれば、各々の国において苦痛を伴うロックダウンを通じて得た成果が台無しになりかねないからだ。

ヤオ氏によれば、WHOは4月23日、アフリカ諸国の保健担当大臣とともに、特に情報共有の不足に関する協議を行う電話会議を主催したという。ヤオ氏はどの国の大臣が協議に応じたかを明らかにせず、タンザニアに同国保健相の参加の有無についてコメントを求めたが、回答は得られなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル平和賞、ベネズエラの野党指導者マチャド氏に

ビジネス

ウォラーFRB理事、労働市場弱いが利下げは0.25

ワールド

ガザ停戦合意発効、イスラエル軍が一部地域で撤退開始

ビジネス

デジタルユーロ導入、危機時に預金7000億ユーロ流
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 5
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 9
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 10
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 10
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中