最新記事

ウイルス

新型コロナウイルス「再感染」実は偽陽性の公算 韓国の研究で明らかに

2020年5月10日(日)12時00分

韓国の保健当局は今年4月、新型コロナウイルス感染症から回復した患者がその後の検査で再び陽性と判定された事例を多数報告し、新型コロナを巡って「再感染」という新たな懸念が浮上した。ソウルのデパートで4月末撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の保健当局は今年4月、新型コロナウイルス感染症から回復した患者がその後の検査で再び陽性と判定された事例を多数報告し、新型コロナを巡って「再感染」という新たな懸念が浮上した。再感染が起こり得るなら、隔離措置やワクチン開発などに厄介な問題が生じる。

しかし、その後の研究で、再陽性の判定が出たのは、感染力がなさそうなウイルスの微細な断片が患者の体内に残っていたためであり、実際には「偽陽性」だと見られることが分かってきた。

韓国疾病予防管理局(KCDC)によると、こうした事例は6日までに350件余りが報告されている。

何が起きたのか

韓国では新型コロナの治療を終えた患者が増えるにつれて、気がかりな動向が見つかった。治癒したと見える患者の一部が、その後の検査で再び陽性と判定されたのだ。

当局は再感染やウイルスの再活性化など、いくつかの仮説について検証。政府の専門家委員会は前週、再検査の結果は「偽陽性」との説が最も有力だと結論づけた。

韓国は新型コロナウイルス検査に、ウイルスの遺伝物質を検出する「RT-PCR」法を採用している。RT-PCR法は素早い判定が可能で、新型コロナに感染したかどうかを判定する精度が最も高いと考えられている。

しかし、中央大学のワクチン開発専門家の Seol Dai-wu氏によると、RT-PCR法は一部の事例でウイルスの古い断片を検出している可能性がある。こうした断片は患者にとっても他の人にとっても、もはや重大な危険はなさそうだという。

Seol氏は「RT-PCR法の検査機器は、感染力を持つウイルス片と、感染力を持たないウイルス片を区別することができない。ウイルスの断片があるかどうかを判定するだけだ」と述べた。

KCDCによると、回復後の検査で再び陽性となった事例の背後に、こうした「偽陽性」が隠れている公算が大きいという。

KCDCの鄭銀敬局長は6日、ウイルス片が死んだウイルス細胞の一部であるとの仮説を裏付ける証拠集めが続いていると述べた。

患者は新たな呼吸器症状を発症したか、当局から再検査の対象に選ばれた場合に再検査を受けていた。

KCDCによると、4月半ばまでに再検査を受けた回復患者の半分弱が症候のある人だったが、こうした症状は新型コロナウイルスが引き起こしたものではなさそうだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東情勢を楽観 ユーロは2

ワールド

イラン核施設攻撃「中核部分破壊されず」と米情報機関

ビジネス

FRBバー理事、関税による持続的インフレを警戒 利

ビジネス

米住宅価格指数、4月は前月比‐0.4% 22年8月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 5
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 6
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 7
    イスラエル・イラン紛争はロシアの影響力凋落の第一…
  • 8
    「温暖化だけじゃない」 スイス・ブラッテン村を破壊し…
  • 9
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 10
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中