ニュース速報
ワールド

アングル:ハリス氏陣営、「労組の男性」の支持確保に苦心

2024年11月02日(土)13時59分

 10月31日、 米大統領選が数日後に迫った中で民主党候補、ハリス副大統領の陣営は一部の労働組合で男性ボランティアを確保するのに苦心していると労組幹部が明らかにした。写真はノースカロライナ州ローリーで演説するハリス氏(2024年 ロイター/Sam Wolfe)

Jarrett Renshaw Nandita Bose

[ワシントン 31日 ロイター] - 11月5日の米大統領選が数日後に迫った中で民主党候補、ハリス副大統領の陣営は一部の労働組合で男性ボランティアを確保するのに苦心していると労組幹部が明らかにした。電話や戸別訪問で投票を呼びかけるボランティアは、民主党支持者らを投票所に向かわせるのに重要な役割を担う。

大半の労組は長年、民主党候補を支持してきた。ハリス氏とバイデン大統領は労働協約交渉で労組を支援し、労働者の権利を守ってきた。

しかし、共和党候補のトランプ前大統領も近年、労組メンバーに食い込んでいる。今回のような接戦で労組メンバーのハリス氏支持が少しでも弱まるようならば、勝敗を左右する決定打になりかねない。

ハリス氏の勝利には、性差別と人種差別がハードルになると指摘されてきた。

米労働総同盟産別会議(AFL─CIO)のリズ・シューラー会長は、ハリス氏への支持熱は強いものの、一部の労組では性差別が支持の障害になる可能性があると指摘。「正直に言えば、女性候補というだけで大統領にふさわしくないと切り捨てる人々がいる。ドナルド・トランプ氏に対しては誰もそんな視点で疑問視することはない」と語った。

シューラー氏によると、こうした男性に戸別訪問で接触するのは難しいため、AFL─CIOは職場訪問で対応している。その方が、彼らの懸念にこたえる会話を持てる可能性がずっと高いからだ。

電気工事士や配管工など、圧倒的に男性と白人が多い建設関連の労組メンバーで問題は特に深刻だ。

これに対し、メンバーの多様性が大きい大規模なサービス業労組では、男性からのハリス氏支持が下がった分を女性からの支持急増が補い、性差ギャップが拡大していると関係者らは言う。

国全体でもこうした現象が広がっており、選挙結果を決する要因になるかもしれない。ロイターの調査では、ハリス氏は女性、特に白人女性の支持が増えている。一方、トランプ氏は2020年の前回大統領選よりも男性の支持率が高くなっている。

デラウェア州AFL─CIOのジェームズ・マラベリアス会長は、男性労組メンバーの間でハリス氏の支持が弱いのは、社会問題に関してリベラル色の強いハリス氏の経歴に加え、一部では男性優越主義も影響していると言う。

AFL―CIOで戸別訪問をしている6人に取材したところ、ハリス氏と民主党は労組の権利の強力な保護者だと考えている家庭がある一方で、民主党への信頼を失ってトランプ氏の方に共感する家庭もあるという。1人は、「男性が最も手ごわい。反論を挑みたがり、事実関係について意見が一致しない」と語った。

AFL─CIOはフィラデルフィアではボランティアが期待通りには集まらなかったため、従来のハリス氏支持者に的を絞らざるを得なくなったと関係者が話した。

<鍵を握る労組票>

ロイター/イプソスの調査によると、労組メンバーの米国民、もしくは家族に労組メンバーがいる米国民では、ハリス氏の支持率が47%と、トランプ氏の36%を引き離している。調査は10月16─21日に655人を対象に実施した。

ハリス氏陣営の広報担当者、ローレン・ヒット氏は、大学教育を受けていない男性有権者からの支持は急低下しても、大学教育を受けていない女性の支持増加で相殺できる可能性があると述べた。トランプ氏陣営からはコメント要請への回答が得られていない。

AFL─CIOによると、激戦州のミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの3州で労組メンバーは有権者の5分の1を占める。3州は、伝統的に民主党が強いため「ブルー・ウォール(青い壁)」と呼ばれる。

これら3州では、投票を呼びかける民主党の運動において労組が重要な位置を占め、労組メンバーが投票日前に何千戸ものドアをノックして回るのが慣例だ。

全米塗装工連合組合(IUPAT)のジミー・ウィリアムズ会長は、同組合では男性のハリス氏支持が減った分を、女性の支持が補って余りあると指摘。「ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、オハイオの各州で女性メンバーと話したが、だれ1人としてドナルド・トランプ氏を支持している人はいなかった。だれ1人として、だ」と強調した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中