ニュース速報

ワールド

アストラ製ワクチンと血栓に関連性も、EU「なお利点」

2021年04月08日(木)11時00分

欧州連合(EU)の医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は7日、英アストラゼネカとオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスワクチン接種とまれな脳血栓症の発症が関連している可能性があるとの認識を示した(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

[ブリュッセル/ベルリン/チューリヒ/ローマ/ロンドン 7日 ロイター] - 欧州連合(EU)の医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は7日、英アストラゼネカとオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスワクチン接種とまれな脳血栓症の発症が関連している可能性があるとの認識を示した。

EMAは声明で「アストラゼネカ製ワクチン接種後2週間以内に、非常にまれな血小板減少に伴う血栓症が発症する可能性がある」と考慮するよう、医療関係者やワクチンを接種する人に注意を促した。

こうした副反応の大半のケースは60歳以下の女性に発生していると指摘した上で、「現時点で得られている証拠からは、特定のリスク要因は確認されていない」とした。

EMAの高官によると、今月4日時点でアストラゼネカ製ワクチン接種後に報告されたまれな脳血栓症の症例は3400万回の接種中169件。

しかし、EMAのエグゼクティブディレクター、エマー・クック氏は「新型コロナ感染症による死亡リスクはまれな副作用による死亡リスクよりもはるかに高い」との認識を改めて示した。

アストラ製ワクチンの利用について、欧州連合(EU)の保健相は共通の指針で一致することができず、感染率や代替ワクチンが利用できるかという点に基づいて欧州各国が独自に決定すべきとなった。

英保健当局も、大半のケースでワクチンの利点がリスクを上回るとの認識を示し、「深刻な安全性への懸念というよりは最大限の注意を払い」、30歳以下へのアストラ製ワクチン接種を停止し、他のワクチンを使用するよう提言した。

世界保健機関(WHO)のワクチン諮問委員会も独自の調査報告書を発表し、アストラ製ワクチンと血小板減少に伴う血栓症との因果関係について「もっともらしいと考えられるが、確認されていない」との認識を示した。

同委は「懸念ではあるものの、非常にまれな事例であると認識することが重要だ。世界で約2億人がアストラ製ワクチンを接種し、こうした報告事例はごく少数にとどまっている」とした。

また、ドイツのワクチン委員会メンバー、クリスチャン・ボグダン氏は、アストラ製ワクチンを接種し、まれな血栓症を発症した60歳以下の女性が通常の20倍に上ると指摘。ある集団で特定期間に高い頻度で発生することは「非常に明確なリスクシグナル」だと述べた。

イタリア当局はEMAの発表を受け、アストラ製ワクチンを60歳以上に限定して推奨すると発表した。当局者によると、政府は60歳以下に同社製ワクチンを避けるよう勧告しているが、禁止はしていないという。

またアストラゼネカは、ワクチン接種に伴い「非常にまれな副反応」として脳血栓症が発生する可能性を明記する方向で、欧州と英保健当局と取り組んでいると明らかにした。

*情報を更新して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、「中立金利」到達まで0.5%幅の利下げ必要

ワールド

米国版の半導体の集積拠点、台湾が「協力分野」で構想

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中