ニュース速報

ワールド

焦点:核合意離脱で孤立する米国、今後の対イラン行動困難に

2018年05月12日(土)09時13分

 5月9日、トランプ米大統領が、欧州諸国や共和党関係者らからの警告にもかかわらずイラン核合意からの離脱を選んだことで、米国の反イラン運動が孤立し、予測不能の事態に陥る可能性が強まったと専門家は指摘する。写真はワシントンで2015年撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 9日 ロイター] - トランプ米大統領が、欧州諸国や共和党関係者らからの警告にもかかわらずイラン核合意からの離脱を選んだことで、米国の反イラン運動が孤立し、予測不能の事態に陥る可能性が強まったと専門家は指摘する。

トランプ大統領は8日、欧米とイランが結んだ核合意からの離脱を表明。合意はイランの核開発や邪悪な行為に厳しい制限を掛けず、気前よく経済制裁を解除したと主張した。

米国の合意離脱は、核問題だけでなく、イランの影響が及ぶイエメンやシリア、イラク、アフガニスタンの脅威に対する今後の行動について、欧州や他の諸国との結束を難しくするかもしれないとアナリストは分析。

また、中東地域で予測できない状況を生み出し、イランが同地域で米国の国益に公然と歯向かって影響力を強めようとするかもしれない。マーチン・デンプシー元統合参謀本部議長はツイッターに「われわれは、より危険な道で孤立し、選択肢も少ない」と投稿した。

イスラエル軍は8日、イランの友好国である隣国シリアと衝突する恐れから、警戒態勢に入り、地域の緊張が高まっていることを裏付けた。

ブッシュ政権時代に国務省高官だったニコラス・バーンズ氏は「離脱は米国の力を弱めることになる」と話す。イランの強硬派を勢いづけ、対イラン政策でロシアや中国からさらに遠ざかり、欧州諸国を困らせるという。「長い間協力してくれた欧州諸国の意欲に深いマイナスの影響を及ぼすだろう」

米政府当局者は、米国とイランの関係悪化が隣接するイラクに悪影響を与えると指摘する。

イラクでは12日に国会選挙があるが、米国が支援した過激派組織「イスラム国」掃討後の選挙で、アバディ首相が続投を目指している。マティス国防長官は選挙を巡りイランが邪魔していると非難した。

マティス氏はかつてイラン核合意の順守が必要だと公言していたが、その後見解を和らげ、議会に対して、修正が必要な不完全な軍縮合意だったと述べた。

ただ関係者によると、内々でマティス氏はイランの脅威を考えると同盟国と協力すべきだと強調してきたという。4月26日の議会証言でマティス氏は「中東の安定に何が重要かという点とイランによる脅威に集中すべきだ」と語った。脅威は核開発を超えてテロ支援やサイバー攻撃にまで広がっていると述べた。

西側のある外交官は、イランがシリアやイラクで米国に対し報復することには疑念を呈す。イスラエルの反撃が考えられるためだ。

「米国を懲らしめるため、イスラエルと戦争する危険は冒さない」と話す。イスラエルは2月からシリアでイラン軍と競り合っており、戦線拡大が懸念されている。イスラエル軍は8日、シリアでイラン軍の不規則な動きを察知したとして、ゴラン高原で防空体制を取るよう指示した。

米国はイランがイエメンで反政府組織「フーシ」にミサイルを供給し、内戦を地域紛争に拡大させているとして、イランを非難している。

米当局者は、イランのライバルであるサウジアラビアを標的にするフーシへの支援をイランが強めるとの懸念があると認めた。イエメンからのミサイル攻撃でサウジ側に多数の死者を出せば、広範な地域戦争の恐れが高まると専門家は指摘する。

イラン核合意の崩壊はまた、イランがひそかに核開発を再開するリスクを高める恐れがある。イランは核兵器の開発を否定し、平和目的の核利用だと主張している。

(Phil Stewart記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:「世界一幸せな国」に忍び寄る不安、経済低

ワールド

アングル:インドの路地から消える電子ごみ再生業、規

ビジネス

ANA、エアバス機不具合で30日も6便欠航 2日間

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 7
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    香港大規模火災で市民の不満噴出、中国の政治統制強…
  • 10
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中