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日本社会

全体で「合わせる」とは?──日本の「会議文化」と歌舞伎や能の音楽には「意外な共通点」があった

2025年10月22日(水)11時05分
鎌田紗弓(東京文化財研究所 研究員)

文化の中の自分を笑い飛ばす

ここでふれた2冊の結びには、偶然だが、重なる言葉がある。メイヤーは「自分の文化を笑い飛ばし、相手の文化をポジティブな言葉で表せば表すほど、だれもが自分の考えや意見を防衛的にならずに語ることができる」と述べる(p.301)。

藤田もまた、生き生きとした音響に「魅了された自分自身を、覚めた目で笑い飛ばし」て、分析的に見つめたうえで「ふたたび魅了される」という往復のなかで研究が深まるとする(pp.220-221)。

相手に戸惑ったり魅了されたりする自分を笑い飛ばしつつ、そこにとどまらず仕組みを知ろうとする。研究でも会議でも日常でも、その繰り返しの中で、他者や自分自身との望ましい「合わせ方」が見えてくるのかもしれない。


鎌田紗弓(Sayumi Kamata)
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所研究員。2018年に東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程を修了。博士(音楽学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京藝術大学音楽学部大学史史料室教育研究助手などを経て、現職。「歌舞伎鳴物作調の分析的研究―伝統的リズム構成法がもたらす「間」の音楽効果の解明へ向けて―」にて、サントリー文化財団2017年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。


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